キーメクスの審判
次の瞬間だった。
「!」
気配を感じ取ったマーク含む面々が上空に注目すれば既に巨大な金色の魔法陣が音もなく浮かび上がっていて──直後眩いばかりの光を灯すと自身が雨雲であるかのように、連続して複数の雷を地上に落としたのだ。舞い上がった土埃が視界を阻んで視認できないが手応えは当然感じてなどいない。ルフレは決して目を離さずに次に備える。
「──残念だよ。ルフレ」
聞こえてきた声に小さく目を開く。
「君が」
地面の振動を感知してぱっと足下に視線を落とせば浮き出た赤色の魔法陣が強く光を灯して。
「頭を使った勝負で、一度だって僕に勝てたことがあるかい!?」
──爆発。
「うげぇ……」
土煙がうっすら晴れてきたが腕で鼻を庇いながら咳き込んだ後に声を漏らしたパックマン含む面々は下された攻撃の餌食となった様子もなく至って無傷だった。それというのも今しがた消失してしまった地面の魔法陣から空に向かって放たれた雷が全く同じ速度や軌道で先程の攻撃全てを相殺したからで。
「よくやるよね。兄妹なのにさ」
マークは魔導書を片手に。
「当然だよ」
黒煙を見据える。
「これくらいやらないと割に合わない」
眉を顰める。
「……僕の妹だからね」
電気の擦れる音。
「はあぁあああッ!」
黒煙を突き破って現れたのは"無傷"のルフレだった。腰に据えたサンダーソードを大きく振りかぶりながら迫るルフレの一撃を受け止めるべく飛び出したのはシュルクで。ビームを展開した神剣モナドで受け止めながら眉を寄せる。
「ルフレっ……どうして……!」
弾き返したが退かず。
「……そんなことっ!」
地面を踏み込んで叩き込む。
「私だって分からないわよ!」
叫ぶ。
「分からなくなっちゃったのよ……! 一心不乱に正しいと信じ続けてきた正義で叩き伏せようとしていたその相手がただの普通の何でもない人間だったなんて、想像できる!?」
気迫に乗せて押し返したが直後死角から飛び込んできたカンナの剣を振り向きざまに受け止めながら。
「初めから狂ってなんかいないわ……悪魔の囁きに乗せられたわけでも。道を踏み外したわけでも!」
今度も弾き返したが今度はカムイが叩き込む。
「何もかもが普通だった──それなのに!」
ルフレは負けじと切り返す。
「否定したのは貴方たちじゃない!」
表情が歪む。
「忌むべき相手と心を通わせたというだけで」
心の奥底で軋む。
「何が悪いのッ!?」