キーメクスの審判
座礼──暫し見惚れていたルーティだったが後ろのフォックスに小さく名前を呼ばれることでようやく硬直を解かれた。
「あ、ありがとう、ございましたっ」
ルーティは畏まって座礼を返した後で急ぎ立ち上がろうとしたが不甲斐ないことに足の痺れを感じてよろめいてしまった。ひゃわわ、と情けない声を上げて次いで立ち上がったフォックスの手に掴まるものだから情けなく映ったのだろうシアはくすくす。その後で立ち上がったファルコもひぎ、と声を上げたが全員からの視線を受けると顔を背けてしまった。あまりにも分かりやすい。
さて──肝心のハイラル平原はメヌエルから北上した先に広がっている。頼みの綱だと頼ったその相手が迷いもなく示したのだ。疑ってかかるより以前に信じるのは自分の十八番なのだから──
「ひとつだけ」
部屋を後にしようとしたその時だった。
「……お忘れではありませんか?」
ルーティはきょとんとする。
「古くから設けられている規則や世間一般的な常識に倣い、依頼者は依頼を受けたその相手の働きに応じて献上しなければならないものがあるはず」
あっ。
「お……お金……?」
恐る恐る訊ねれば正解とばかりににっこりと。
「おいくらでしょうか……」
「一両ほど頂戴したく存じます」
ちょっと待って。
「い、いちりょうって……いくら……!?」
「十万円だぞ、ルーティ……っ!」
「じっ!?」
ルーティとフォックスとファルコは円陣を組むようにしてこそこそ。いや、まあ確かに予測をすればそれが未来予知以上に当たるなどと噂される彼女の能力を頼らせてもらったのだ。冷静に考えてもみればタダなんて上手い話があるはずも……
「うふふふふ」
シアは肩を震わせて笑った後で。
「冗談です」
「え?」
「商売とはそういうものでしょう?」
案の定、呆気に取られる三人を差し置いて。
シアは微笑を浮かべて締め括る。
「……今後とも。ご贔屓に」