キーメクスの審判



恐ろしく迅速で。

それでいて、あっさりと。


「……ハイラル平原」

ルーティはぽつりと小さく繰り返した。


「以上です」


はっと顔を上げると目を細めて柔らかく笑いかける見目麗しい少女の姿がそこにあった。先程までの空気感など無かったかのように止まっているものと錯覚していた時が動き出す。円窓の外で小さな影が横切り羽ばたく音が遅れて聞こえて。……

「本当なんだろうな」

ルーティがぎくりと大袈裟に肩を跳ねたのは今まさに自分も同じようなことを訊ねようとしていたからである。今度もフォックスが「ファルコ」と小さく呼んで肘で小突き睨んだが本人は「んだよ」と不服そうに眉を寄せて。

「うふふふ」

シアは長い袖を口元に運んで笑いながら。

「至極当然の反応です」

そうして。

彼女は膝の上で手を重ねる。

「これはあくまでも予知ではなく予測。……言ってしまえば誰にだって出来ること」

慌てたルーティが否定するよりも先。

「ですが、お考えを」

遮るように。

「昨今電子の世界に蔓延る、預言者を自称した名も知れぬ人間と既にいくつもの実績のある私と」

小首を傾げて薄笑みを湛えながら。

「いったいどちらが信用に値しましょう……?」


次に硬直を解いたのは。

何処からか響き渡る古時計の鐘の音だった。


「うふふ」

シアは笑う。

「ご理解いただければ幸いです」


未来だけじゃない。

本当の意味で。何もかも。


「またのご利用をお待ちしております──」
 
 
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