キーメクスの審判
ネロはやり場のない怒りに舌を打つ。立ち振る舞いに荒さがあれど、彼のことだ──今度の件でリムが記憶を失ってしまったことが何より許せないのだろう。けれどそんな彼と同じくらい、ドンキーも自分自身に憤りを感じているに違いない。
「ネロ」
この空気に終止符を打ったのはレッドだった。出来ることならもう少し早めに宥めるなどして落ち着けてほしかったところだが終始動けずにいた自分が言えた口ではない。それでもこの鶴の一声には感謝せざるを得ない──ルーティはネロを回収してくれたレッドに心の中で感謝を述べる。
「良くないよ」
レッドは戻ってきたネロに注意を促す。
「リオンの話は聞いてるでしょ?」
「……ん」
ここでのやり取りも全部聞こえてるんだろうな。心優しい彼には辛いことだろう。
「リンク?」
と。顎に手を当てながら考え込んでいる様子の彼にルーティは疑問符を浮かべる。
「ダークシャドウを庇うつもりはないのですが」
前置きをした上で。
「俺は──犯人は他にいると考えています」
リンクは衝撃的な推測を口にする。
「他に、って」
「仮にダークシャドウが本当に我々の不意を突こうとしていたのだとして"災厄の目"を持つ二人が気付かなかったことの説明が付きません」
ロイは腕を組む。
「……たまたま調子悪かったんじゃね?」
「リムは気付きましたよ」
食堂の中が一瞬どよめいた。
「ただ、残念ながら彼女も今はあの状態なので何を見たのか聞き出すことは難しそうですが」
「成る程。でもそれだけじゃダークシャドウが犯人じゃないとまでは言い切れないよ」
マルスの発言に同意の声が上がる。
「寧ろこうなることを見越してダークシャドウに近付くなって言いたかったんじゃないの。正義愛好家さん達は」
カービィの意見もこうなった以上は一理ある。
「つまりダークシャドウは初めからこうするつもりだったと?」
「そー」
「では不可解な点を一つ挙げましょう。ダークシャドウが俺たちと敵対するその真の目的は?」
それは。
今となっては薄れてきてしまっているが。
「本物の僕たちを殺して」
違和感に気付いたカービィは声を窄めながら。
「成り替わる、為……」
あれ?
「おかしいでしょう?」
リンクは苦々しく笑う。
「だったらどうしてあの場面で俺たちを殺さずに見逃したんですか?……」