キーメクスの審判
……え?
「ははは。見抜かれてしまったか」
扉の向こうで彼は朗らかに笑ってみせる。
彼──リオンの能力は意識を集中させることで読み取った言葉の羅列が声となり頭の中に響くというルカリオの種族であれば基本的に誰もが持っているもの。話によると彼の場合は幼い頃から特別その力が強すぎた為に両親によって与えられた特殊な作りである黒の鉢巻を目隠しのように用いることによってその力を抑えていたらしいのだが。
制御が。
出来ないということは。
「その通りだよ」
リオンは心の中での推測に対し返答する。
「今の私にはこの場所から玄関先まで深く意識せずとも皆の心の内が声となり頭の中にまで勝手に流れ込んでくる……ネス殿とリュカ殿に断って一室を貸し切りカーテンを閉め切った上で消灯して鉢巻を用いているが尚此れだ。ドクター殿の処方された薬のお陰で症状は落ち着いているが、寸刻前まで血管が破裂する寸前まで膨れ上がっているかのような耐え難い頭痛に悩まされていたよ」
酷い話だろう、とリオンは話していたが。
笑えるような内容であるはずもなく。
「頭の中に思い浮かべてくれるだけでいい」
ルーティは咄嗟に口を結ぶ。
「声が二重になって聞こえるからな。流石の私でも吐き気を二度三度覚えたよ」
それはきっと。
どんな地獄よりも苦しくて。
「直に落ち着くさ」
辛いことのはずなのに。
「本当に?……どうだろうな」
終始柔らかく優しい声音に胸が軋む。
「……そうでなくては困るよ」
彼が一体。
何をしたというのだろう──
「リンク殿とドンキー殿は食堂に居る」
ルーティは自分でも気付かない内に眉を寄せながら力なく拳を握って俯いていた。
「そんな風に落ち込まないでくれ! 私はご存知の通り不屈の心と鋼の精神が取り柄だからな!」
どうにもならないのだとは分かっていても。
「頼んだよ。……ルーティ殿」