キーメクスの審判



ユウとリオンの部屋。

「ぁ」

扉を開くと出迎えたのはリュカだった。困ったように眉尻を下げて胸の前で手を握りながらおろおろと視線を彷徨わせた後ゆっくりと振り向いた先で先程のリムと同じように上体を起こした状態でベッドに座っているユウの姿を見つける。

「……ユウ」

ルーティが静かに呼ぶとその人の代わりに側で看病をしていたのであろうネスが振り返った。何か口を開こうとしたのを手を伸ばして制した上でその人はようやく口を開いたのだ。

「……ルーティか」


まるで、両目を覆い隠すように。

黒い布を被せた姿で。


「……その」
「目が視えないのは本当なのか?」

何から話したものか、と言葉に詰まるルーティより先に訊ねたのはフォックスだった。

「お前も居たのか」

ユウは少しも此方に顔を向けないまま答える。

「……そうだな」


失明──黒い布を被せていたのは、これ以上余計な負担をかけない為の苦肉の策というものだった。


「目を使っている以上はいつかはこうなるものだと予測していた。驚くようなことじゃない」

冷静に話してはいるものの。

それはどんなに恐ろしいことだっただろう。

「……本当に……なにも視えないの?」
「未来予知の話か?」

ルーティが恐る恐る訊ねると意図を察したユウは布越しに己の瞼に指先を触れながら。

「念力は使える。……が、あれも言ってみれば目を使うものだからな」


目に関連する全てが機能していない──


「……家に連絡は?」
「するわけがないだろう」

有り難いことにユウはフォックスの問いに即答してくれた。恐らく他の誰かにも提案されたことだろうがその都度断っていたのだろう。……連れ戻されてしまうのは目に見えている。

「えっと」

ルーティは部屋を見渡した後で先程から気になっていたもう一つの疑問をおずおずと口にする。

「……リオンは?」
 
 
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