キーメクスの審判
記憶喪失、……って。
「け……怪我は」
ルーティの問いに対しドクターはクリップボードに挟んだ診療録に目を通しながら答える。
「全員、目立った外傷は無しだ」
血の気が引いていく感覚とは。
多分、今この瞬間のことを指すのだろう。
「リンク達は」
異常発生した魔物の討伐任務。
「説明が難しいな」
動悸がする。
「医療従事者として、原因不明の症状に陥っている患者の面会を許可する訳にはいかないんだが……」
その時だった。
「……失礼します」
扉を軽く叩いた後に入室してきたのは、普段の衣装に加えて白衣を羽織った姿のシュルクだった。どうやらドクターの手伝いをしていたらしく彼の手には紙を挟んだクリップボードが。
「シュルク」
「、戻ってきたんだね」
ルーティが呼ぶとそれまで険しい顔つきだったシュルクは安心したように表情を綻ばせた。
「どうだった?」
「ドンキーさんは異常が見られませんでした」
どうやら他四人の様子を見ていたらしい。
「……ただ」
ただ。他三人に関しては芳しくないみたいで。
一時的なものだとは思うけど。……
「ルーティ」
名前を呼ばれてハッと顔を上げる。
「気を強く持つんだぞ」
事態を上手く呑み込めずにうわの空となってしまっていたルーティをまるで現実に引き戻すかのようにそう言ったのはフォックスだった。
「……うん」
あの後、マリオとルイージの部屋を後にしたルーティは事情を聞いたフォックスと合流してある部屋の前に来ていた。ルーティはゆっくりと深呼吸をした後で扉を手の甲で"優しく"叩く。
「入るよ。……ユウ」