キーメクスの審判
君も。戦士なら。
「はぁっ……はぁっ……!」
ある程度考える能力を養った方がいい──
「マリオっ!」
悠長に街に出掛けていたのが仇となった。
いや。それ以前の問題だったのかもしれない。
「、!」
同日十九時過ぎ──エックス邸。
正午に請け負った依頼の関係で街に出掛けていたルーティは切迫した様子のマリオからの連絡を受けて酷く青ざめながら屋敷に駆け込んだ。一分一秒でも早く辿り着けるように。息を切らせながら全力で。
「……ピチカ」
「おに、ぃ」
扉を弾き飛ばす勢いで開いた直後に飛び込んできたピチカは肩を震わせながら訴える。
「り……りむが……っリムが……」
ルーティが恐る恐る顔を向けた先では白衣を羽織ったマリオ──ではなくドクターの姿があった。紛らわしいがX部隊のマリオは医者が本職ではない為、今回の事態を受けて彼に診察をお願いしたのだろう。手際が良いのは恐らく他にもフォーエス部隊の隊員が居合わせていた証拠である。兎角ルーティはそっとピチカを離した後でゆっくりと歩み寄った。
「……何が、」
発言を中断してはたと立ち止まる。
「リム?」
ここはマリオとルイージの部屋。一時的に貸しているのであろうベッドには一人の少女の姿。ぐったりと横たわっているわけでもなければそれらしい外傷も見られない。ただ上体を起こした状態でベッドに座る彼女は心なしかぼうっとしているようで──
「……だれ」
え、とルーティは声を洩らした。
「リム……って……誰……?」
……え?
「これって、……」
ルーティが呆然としながら訊ねるとマリオは帽子の鍔を持って影を落とし、その横でルイージが眉を八の字に下げながら小さく頷いた。答え合わせをするかのようにドクターが深く息をついて言葉を紡ぐ。
「"記憶喪失"……だな」