キーメクスの審判
ダークリンクが口角を吊り上げながら意味深に発言すれば五人は身構える。……が。
「な……!?」
腕を横に打ち払うのが確かに見えた──放たれたのは影のように黒く塗られた幾つもの爆弾だったがそれにしては飛距離が足りないなと油断したのも束の間それらは大きな爆発を起こして周囲を黒い霧で包み込んで。誰もが咳き込む中で地面を蹴り出す音を逸早く拾ったのはリオン。
「逃げるつもりかっ!」
他四人も眉を寄せて振り返った。
「けほ、っ……待ちなさい!」
「逃さへんぞ、ダークシャドウ!」
このまま戦闘に入ると見せかけて撤退とは小賢しい──なんて考えを持って追い回しているのでは一体どちらが悪やら分からない。けれどともかくこの場に姿を現してちょっかいを掛けてきたのをみすみす見逃すわけにも。
意外にも先頭に踊り出たのはドンキーだった。それというのも今回の任務には関係のない幾つかの魔物がこの空気に感化されたのか興奮状態で襲いかかってきたからで。対処にあたっていたリムやリンクは出だしこそ遅れたものの、ドンキーのすぐ後ろに付いたユウとリオンが先を駆けるダークリンク達目掛けてそれぞれ紫のエネルギー弾や青の波導弾を放ち足止めを試みる。
「クソがッ、しつけーんだよ!」
堪え兼ねたダークルカリオが黒の波導弾を放つもユウの瞬き一つで容易く阻まれた。成る程確かに彼自身が明言していた通り災厄の目を持つあの二人を相手にするのは現実的ではないらしい──ダークリンクは盛大に舌を打つダークルカリオを横目に状況を読み取って正面に向き直る。
「テメェら余計に構うな! もうすぐ──」
その時だった。
「、え?」
そんな声を上げたのは最後方のリムである。
「? どうし──」
気付いたリンクが振り向いたが直後。
「きゃあああッ!?」
眩いばかりの光が包み込んで。
それから。……
「……今のは」
ダークリンク含む三人は足を止めて振り返る。
正面を向いていた彼らには分からない。けれどあの一瞬。目を離した隙に。
自分たちを追っていた五人は。
"一人残らず倒れ込んでいたのである"。
「ぃ……ッあ……」
「ぁぐ……うぅう……ゔ……っ!」
呻く声はあれど立ち上がれる気配もない。
何が起こった?
「すまない」
空間が歪んで二つの影が降り立つ。
「座標の特定に手間取った」
「……これは?」
状況を訊ねるダークリュカにダークルカリオは肩を竦めてぶっきらぼうに返す。
「知るかよ。振り返ったら寝てやがった」
「……もしかして」
ダークピチューは眉を顰めたが。
「運が悪かったと言わざるを得ない」
ダークネスの言葉に各々は小さく頷く。
「亜空間に戻ろう」
ダークリンクは惨状から目を離せないまま。
「……ああ」