キーメクスの審判
……これが勘違いなら。
どれほど良かったことだろう。
朗らかな笑顔は。
希望に影を落としたことに気付かない。
同日。十六時。
「いったで、リオン!」
レイアーゼ高原。
「はああぁああああッ!」
青く揺蕩う波導を拳に纏って地面を深く踏み込めば浅く抉れて。気迫の籠もった声は天空を劈くが如く。向かいくる黒く塗られた四つ足の魔物目掛けて拳を放てば砂煙を巻き上げて──空の彼方。
「まだだっ! リム殿!」
次いで日光を遮る影が高く掲げた脚を降下と同時に振り下ろせば地面は砕かれ抉られて。
「……ドンキー!」
逃げ惑う魔物が向かう先。
手のひらに拳を打ち付けて構える男が一人。
「歯ァ食い縛りやぁッ!」
爆発にも似た殴打音が響き渡る──
「次っ、リオン!」
「任された!」
「いったれいったれー!」
「我々もやしの出る幕は無さそうですね」
「誰がもやしだ」
魔物の群れの討伐任務──それを熟す五人の姿がそこにあった。ただひっそりと暮らしているだけならば未だしも異常発生しているばかりにいつ街道を通る人間を襲うか分からないということで緊急で任務を引き受けたがこれがまた話によると本来であればハイラル地方に生息する希少種だというのだ。
その点に関しては気になるが討伐してしまえば問題ないということで全滅させるべく奮闘しているのが現状。まあ腕っ節の強い三名のお陰で他二名の手が空いてしまっているわけだが。
「失礼いたしました。
「はっ倒すぞ」
「でも、穎割れ大根ですよね?」
しつこく連むリンクにユウは舌を打つ。
「……それにしても圧倒的ですね」
土煙を巻き上げてはそれを突き破り飛び出して自慢の拳や脚で休みなく殴打を繰り出す三人を遠目に、リンクは感心したように呟く。
「夕方までには帰れそうで助かりました」
ユウは黙っている。
「これなら夕飯の支度にも間に合いそうです──」