キーメクスの審判
回想は終わって、元の場面に引き戻される。
「いやいや」
ダークフォックスは顔の前で手を振る。
「協力するよう言ってきたのはそっちじゃん」
ルフレはぎくりと。
「それをさも自分が脅されて渋々それに従ってるーみたいに曲解させんのやめてくんないっスか」
「うるさいっ!」
どうしてこういう類の人は照れ隠しに手や足が出るのだろう──ダークフォックスは魔法陣から取り出した魔導書が投げ付けられるのを溜め息を吐き出しながら右や左に顔を傾けて回避。
「そんで」
耐え兼ねたダークフォックスがどうどうと両手を軽く挙げながら話を切り出すとルフレは次の魔導書を構えた姿勢のままぴたりと静止して言葉を待つ。
「期限は日付が変わるまでってところっスかね」
「……そういうことになるわね」
彼の協力のお陰で今日の内は万が一フォーエス部隊とダークシャドウが鉢合わせても有無を言わさず戦闘に転じるなんてことは無さそうだけど──束の間の安息といったところかしら。とにかく今日の内に事件解決の糸口を見つけ出さなくては最悪な事態を引き起こし兼ねない……
「るぅちゃん」
ルフレは顎に指の背を添えながらぶつぶつと。
「デートしない?」
「ひゃえっ!?」
突拍子もない提案に声がひっくり返った。
「き、急に何を言い出すのよ!?」
「急ってか割と前から誘ってんじゃん」
「そんな場合じゃないでしょ!」
「これが最後かもしれないんスよね?」
詰め寄られてしまえば。
んぐ、と喉の奥に言葉を詰まらせて。
「俺るぅちゃんとの楽しい思い出が欲しいなー?」
……どうしてだか。この人には他のダークシャドウ以上に敵わない何かがある。……気がする。
「わ……わかったわよ」
ルフレはぷいと顔を背けて承諾する。
「その前に……着替えさせて」
「えー? 俺のためにオシャレしてくれんの?」
「ただの女子の嗜みっ! 勘違いしないで!」