キーメクスの審判
ばちん、と。
乾いた音が鳴り響いた。
「……って」
ダークフォックスは打たれた頬を触れる。
「……そうね」
ルフレはぽつりと口を開く。
「……図星だわ」
気付かなかったわけじゃない。
それでも。
「ぶって悪かったわね」
「これがリーダーなら丸焦げにされてるんで」
「随分と野蛮なのね」
「骨まで焼こうとしたくせに」
そうして、何故だかおかしくなって。
二人は笑い合った。
お互いの立場など忘れて。……
「い、っ」
「あー動かない方がいいっスよ」
立ち上がろうとしたが体の要所要所に鋭い痛みを感じて地面に尻を付くルフレを、ダークフォックスがあっけらかんとした様子で案じる。
「右脇の下、青痣出来てるんで」
「……見たわね」
その瞬間ルフレはむっと唇を突き出して手を伸ばしダークフォックスの頬を抓った。
「あででっ」
痛みを訴える様に満足したのかすぐに解放した後でルフレは膝を抱えて座り直す。
「……なんで助けたのよ」
この状況を知られることで立場が危ぶまれるのはどちらも同じこと。特に彼の場合はリーダーと敬愛するその人が許してもその上司にあたる悪逆非道の神々が許してくれないことだろう。
「俺、面食いなんっスよねぇ」
……!?
「ってゆーのは半分くらい冗談でぇ」
ダークフォックスはケタケタと笑う。
「ずぅっと思ってたんスよねえ」
そうして最初と同じく両膝を立てて座りながら膝に頬杖を付く彼は最初より幾らか近かった。
「X部隊とは仲良くやってんのになー、って」
「……それだけ?」
「きっかけって大事なんスよ」
ダークフォックスは歯を見せて笑う。
「それで仲良くなれたらハッピーじゃないっスか」