キーメクスの審判
パックマンがルフレを連れて向かった先は資料室だった。ちょうど扉が開いてすれ違った男性職員に会釈しつつ二人は資料室に入る。室内は貴重な資料を保管しているにも関わらず薄暗くそれでいて埃っぽかった。その不快感に僅かながら顔を顰めながらルフレが進み出ればパックマンは後ろ手で扉を閉めた上で鍵を掛けて不気味に笑い出す。
「隊長サンの端末に電話かけて予定をずらしたり、黄色いのに化けてお兄さん引き剥がしたり」
空気がざわつく。
「ちょー天才じゃないっスかぁ?」
進み出た足先が床を触れれば微量の風が巻き起こって黒が頭の先まで蝕む。伏せていた瞼を持ち上げれば双眸は紅蓮の如く赤に染まり口角を持ち上げたが直後黒は弾けて正体を現した。
「俺ってぇ」
ルフレが尻目に捉えたその相手は。
「役者の才能あるのかも」
亜空軍所属。偽物集団ダークシャドウ。
軽薄な笑みを湛えて悪辣な神々に準ずる忠実な駒──ダークフォックス。
「馬鹿言わないで」
後ろから伸びてきた手を弾いて睨む。
「これだって私の策の内だわ」
心の介入をまるで許さない鋭い眼孔に見据えられても尚ダークフォックスは狼狽えるような気配もなくけたけたと笑いながら。
「怒んないでよぉ、るぅちゃん」
「っ! その呼び方やめてったら!」
はてさて。これは一体どういうことだろう。
偽物集団ダークシャドウと第四正義部隊フォーエス部隊といえばひと度視線が交わしたならさながら龍と虎のように天変地異を引き起こす勢いで争う仲だというのに。ダークフォックスはルフレに後ろからゆっくりと歩み寄り、肩を組むと。
「そんなこと言って」
にやにやとした顔で横から覗き込みながら。
「満更でもないくせにぃ……」
ルフレは今度も手荒く腕を掴んで剥がすと腕を組みながらそっぽを向いて声を上げる。
「勘違いしないで!」
ダークフォックスがにやにやと見つめる中で。
「私は、別にっ」
フラッシュバックする。
「……あんなことさえなければ……!」