キーメクスの審判
定例会議──なんて言ったところで結局は隊長たるロックマン次第である。会議自体も内容の割には厳格という程でもなくこうしてロックマンが抜けてしまえば浮いた時間を各々自由に消費するべく解散の流れとなるのがもはや定番で。……
「おい」
会議室を出て通路を歩くマークとルフレを後ろから呼び止めたのはリドリーだった。
「どうしたんだい?」
「妹の方だ」
リドリーは睨みを利かせながら続ける。
「覚えがあるだろうが」
マークが振り返った先でルフレは黙っていた。このまま何も言及せずに黙秘するものと思えばその内に小さく溜め息を吐き出して。
「……好きなように言えばいいわ。私はただ独断で動いた結果、逆上した亜空軍基ダークシャドウにX部隊が不意を突かれて負傷する最悪の展開を避けたかったってだけ」
そこまで言うとリドリーは納得したのか諦めたのか舌打ちと同時に目を背けるとそれ以上は何も言わずに立ち去っていってしまった。正直、妹の性格を鑑みるに数十分に渡って口論するものだと思っていたけど。マークはルフレの横顔を暫く見つめていたがルフレは視線に気付くと。
「兄さんならそう言うでしょう?」
妹はつくづく僕に似ていた。
……良い意味でも。悪い意味でも。
「そうだね」
小さく笑って共に歩き出す。
「ただもう少し寄せるならラインを攻めた発言を心がけないとね」
「それって喧嘩になるんじゃないの?」
「ならないようにするのさ」
ルフレは肩を竦めてくすくすと。
「いい性格してるわね」
今後の流れについて簡単に話しながら歩いていった先のエレベーターに乗ろうとしたその時である。
「ルフレ」
二人は肩を小さく跳ねて振り返る。
「話があるんだけど」
マークとルフレは顔を見合わせたが二度目ともなれば心折られたのやら溜め息を吐き出したルフレが進み出た。そりゃあまあ、彼女の意図することは筋が通っているのだとしても誰もが気に留めずに流してくれるとも限らないわけで。
「兄さん」
ルフレは背中を向けたまま投げかける。
「終わったらすぐ部屋に向かうわ」