スマ学200のお題


97.思春期



ここは校長室。

「……あ、あのさ」

黙々と校長としての職務に取り組む兄をデスクの縁に手を付き寄りかかるようにしてらしくもなく吃りながらちらちらと様子を窺いつつ口を開いたのは。

「兄さんってその、したことある?」


語呂合わせなどといった言葉遊びによる特別な日というのは様々あるが、今日はその類いの七月二十一日。

「何を?」

マスターはペンを走らせるその手を一切止めずに訊ねた。

「分かって聞いてるだろ」

クレイジーは頬に朱を帯びて返す。

「僕たちみたいな思春期男子には欠かせないあれというか」


……ああ。


「しないこともないが」

クレイジーは弾かれたように振り返る。

「するの!?」

こうも至近距離で声を上げられたのでは流石のマスターも手を止めてしまう。

「しないよりはいいだろう」
「そりゃそうだけど」
「あまり回数は出来ないがな」

ふ、ふぅん……クレイジーは向き直る。

「日に五回くらいが限度だ」

ちょっと待て。

「僕でも二回くらいなのに!?」
「少なくないか。お前なら千はいくものだと思っていたんだが」
「そんなにしたら僕死んじゃうよ!?」

二人は顔を見合わせる。

「筋トレ」
「自慰」

噛み合ってない。

「するわけがないだろう!」
「五回ってなんだよ! 雑魚かよ!」
「雑魚とか言うな!」

何はともあれ。

……イメージが崩れなくてよかった。
 
 
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