スマ学200のお題
90.メール
はあっと吐き出した息が温かい。
両手で受け止めて小さく身震いをすると隣を歩いていたその人は笑って。
「……寒くなってきたね」
レイアーゼ学園敷地内にある学生寮は夜間外出に関して基本的に認めていないのだが夜遅くまで勉学に付き合ってくれた先輩を送るともなれば個人的な問題とはいえ話は別である。
「コンビニ寄ってく?」
首を傾けて提案するのはレッド。
「そうだな……」
呟いて、マークは何気なく空を見た。
今日みたいに空気が冷たく澄み切った夜は空の星々がより一層美しく輝く。都会とはいえこんな綺麗な夜空が拝めるんだなとぼんやり眺めていたその時のこと。
小さく煌めく光。
「え」
粒が水色の輝きを大きく灯して――
紺碧の空を。西から東へ。
「流れ星!」
二人が思わず声を揃えた頃、それは闇に吸い込まれるようにして失せた。はっと我に返って興奮が醒めない内にマークは取り出した携帯に感動を急ぎ打ち込む。
『流れ星を見たよ!』
返信は直ぐに返ってきた。
『いいなぁー! 僕の部屋からも見えるかな?』
小さく笑みがこぼれる。
「誰かとメール?」
今度は肩を跳ねて振り返った。
「う、うん」
「どんなに小さいことでも好きな人にはメールを送りたくなるよね」
恥ずかしそうに笑みを浮かべて頷く。
「起きててよかったね。ルキナ」
……ん?
送信したメールの宛先と。
受け取った返信メールの差出人は。
「マーク?」
途端その場に屈み込む。
……外は寒いが、顔が熱い。