スマ学200のお題
89.犬
世の中には何を言ってもやらせても嫌な顔ひとつせず忠実に確実にこなす忠犬のような人間がいる。
……が。
出来る犬にも失敗というものはある。
「ついてくんな!」
休憩時間。
「お前なんかもう知るかッ!」
「待ってください!」
慌てた様子で声を上げるダークウルフを振り向くことなく舌打ちを返して荒々しく歩みを進めるのはスピカである。
何があったのかと聞かれたところで後の関係にはそれほど響かない時間を置けば落ち着く程度の問題なのだが何せ今回は少し厳しく当たりすぎた。そんなことを用も足さないのに洗面所に入ってから気付くのだから外に出づらいという。
「あれ、スピカ?」
と。鉢合わせたのはルーティ。
「どうしたの?」
「何がだよ」
「用も足さないのに突っ立ってるから」
気付かれたくないような事態に限って、あっさりこれだから困る。
「喧嘩でもした?」
ぎくりと肩を跳ねた。
「し、してねぇし!」
「本当に?」
そう言うルーティは廊下を見ている。
「だってほら」
スピカが怪訝そうに覗き込むと。
キューン、キューン……
犬かよ!
「出ていってあげたら?」
ルーティが振り向いたがスピカは口元を片手で覆い隠し、震えながら。
「も、もう少しだけ……」