スマ学200のお題
82.変態
「今日は、」
「言わせると思っているのか」
八月七日はバナナの日。
エス組の教室を訪れたはずが出迎えたのはユウである。リオンが発言しながら戸を開けた瞬間に上履きのまま顔面に足を置いて。
「これは何のつもりだ、ユウ」
「とぼけるな。今日はバナナの日とでも言いたいんだろう」
ユウは足を離して腕を組み睨みつける。
「分かっているではないか」
リオンは不敵な笑みを浮かべた。……やはりな。
毎度毎度、こういう情操教育上よろしくないものを連想させる日となると水を得た魚のように迫ってくる。それが今回このエス組生徒にターゲットを向けられた。
クラスメイトの恥を晒すのは先輩としての株が下がる。
ここは何としてでもこいつを食い止める――!
「……は」
と思ったのに。リオンがさっと取り出したのは手提げ袋。中にはバナナの束。
「なんだそれは」
「見ての通りだが」
リオンはにっこりと笑った。
「今日という日がバナナの日だからこそ、後輩に美味しいバナナを食べてほしくて買ってきたのだよ。それをユウ、まさか私がバナナを咥え込む様を拝みたいだとかあわよくば下の口でも食べていただきたいだとか思っているとでも?」
ずいと詰め寄って、
「健全な気持ちで参上した私に失礼というものだよ、ユウ。本当に変態なのはすぐそちら方面へ思考が行き着く貴殿なのでは……?」
くっ。……今の発言で視線が痛い。あらぬ疑いがかけられている。
「それなら貰うよ」
脇を抜けてハルがリオンを見上げた。
「ただのバナナではないぞ?」
「そう……」
「茎が太くて短いものを選んだからな!」
回し蹴り(条件反射)。
「ゆ、ユウ……今のはただの豆知識」
「貴様が普段から変態なのが悪い!」
一度定着したイメージはそう簡単には拭い去れない。