スマ学200のお題
81.アンケート
うちの理事長は気まぐれ且つ神出鬼没だ。
「アンケートをとってきたよ」
こうした何の脈絡もない発言と共に机の下から出てくることもしばしば。
――此処は校長室。
「せっかくいいとこだったのに……」
ぶつぶつと呟いて衣服を整える教頭のクレイジー。……彼らが何をしていたのかという件については触れないでほしい。良くも悪くも手が空いていたのである。
「アンケートというのは?」
校長のマスターが訊くと理事長のタブーはそれまで後ろに手を回し隠し持っていた一枚の用紙を差し出した。こぞって覗き込んでみるとそれにはどうやら自分たちの名前が書いてあるようなのだ。マスターとクレイジー。票数としては……
「うぐっ」
マスターの方が圧倒的有利の様子。
「だからなんで兄さんの方がモテるんだよ、双子なのに」
「お前は性格が悪いからだろう」
さらりと返されたのでは返す言葉もなし。
「そんな顔をするな。俺がお前に票を入れといてやる」
「むりだよ。ひだりてがないんだから」
……え?
「そんなの関係ないだろ」
「かんけいある。マスターはマスターだしクレイジーはクレイジー」
「ちょっと待てお前それはどういう意味で俺たちの名前を使っているんだ」
タブーは至極きょとんとした様子で。
「みぎてとひだりて?」
「何だよそれ。じゃあこのアンケートは利き手の話?」
「ううんちがうよ」
あっさり。
「だんしがおせわになるてのはなし」
ああ成る程ね、思春期男子が自分を慰める時に用いる……
「人の名前を隠語みたいに使うな!」
タブーがマスターにこっぴどく叱られたのは無理もない。