スマ学200のお題


75.人気



容姿端麗、成績優秀。何処の世界にも非の打ち所がない人間というものはいる。

「兄さん!」 


例えばこの教室――エス組でも。


「どうしたんだい」

保健の授業では男女受ける教室が異なる。授業を終えて休み時間、教室の戸を男子の授業を担当していたマリオが開けるよりも早く、薙ぐようにして勢いよく開いて飛び込んだのはルフレだった。

「髪が絡まっちゃって……」
「あらら。僕が直すからこっちに来て」

そうして近付いてきたルフレにそれまで座っていた席を譲り、マークは後ろへ。

「痛かったら言ってくれ」
「マーク、日焼け止め持ってない?」

ルフレの髪を解いて丁寧に結い始めるマークに声をかけたのはパックマン。

「鞄の中にあるから勝手に取って構わないよ」
「サンキュー」
「マーク、折り入って相談が」
「数学のノートなら机の中にあるから授業が始まる前に書き写して」
「いつも悪いのぅ」

此方はシラヌイが言うより先に察したのかさらりと。

「……よし。これで大丈夫」
「ありがとう兄さん」
「マーク、月曜日の歴史の授業で貰ったプリント持ってる?」
「持ってないけど内容は頭に入ってるよ、どうかした?」

いつの間にか教室の出入り口にはマークに憧れる女子の群れ。

「相変わらず人気だね」

通りかかったルイージが笑う。

「……いや」

人気というより、苦労人。
 
 
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