スマ学200のお題
70.校長
生徒側にしてみれば。しんと静まり返った講堂の中多数の生徒たちと肩を並べてじっと口を噤み、先生方の季節に因んだ冒頭から織り成される伝統がどうとか校風がどうとかといった長話はどうだっていいのだ。
特に酷いのは陽気が心地いい春の季節。心底どうでもいい長話を聞いている内に、夢の中へうつらうつら。惚けたような嗄れた声も睡魔にかかれば子守唄も同然。
……が。そんな眠気も覚めるほどに。
レイアーゼ学園校長を務めるマスターの話は――面白い。
「次は校長先生のお話です」
靴音、高らかに。舞台上の演台の前まで足を進ませてマイクに右手をかける。
すっと開いた瞼の下から蒼い瞳を覗かせて。
「……小蝿も飛び交う季節になったが全員起きているか?」
その切り出し方は起きるわ。
「満開だった校庭の桜も春休み期間中雨風に打たれ、散りつつある。咲き誇る様を見上げる分には目も奪われるほどだが、落ちた花弁はというと、人や車に踏まれて灰色に変色し、いくら同じ桜の花とはいえ花見をする人間もそう居ないだろう」
マスターは口元に笑み。
「……いいか。この世界では地に伏した者は見下される」
始まった。
「評価を得たいなら上に立て」
子供にする話じゃないだろ!
「同じ台の上の人間を蹴落とせとは言わない。才能のない奴はいずれ落ちる」
内容がシビアだよ!
「上にいる限りは美しく居ろ。持て囃される内が花だ。だからといって自分を本当の花と重ねるな。散るも散らぬも働き次第だ、ただで咲き誇れると思うな」
最後に、とマスターは紡いで。
「成長期を過ぎたら身長は諦めろ。以上」
話が終わるとダークファルコは顎に手を当てて。
「……だそうです、番長」
「何が言いたい」
この学校の校長の話は面白い。