スマ学200のお題
68.同情
今日は二月十四日、言わずと知れたバレンタインデー。
「はあっ!?」
パックマンは驚きのあまり声を上げた。
「もうそんなに貰ったのかよ……」
此処はエス組の教室。
「あはは」
と苦笑いを浮かべるのはマークだった。
さすが、と言うべきか彼は朝の挨拶運動の最中流れるようにして女子にチョコを手渡されてしまったようだ。ピンクに黄色に青。色とりどりのそれでいて可愛らしい包装を施されたチョコ達が困り顔のマークの机の上に広げられている。
「読み通り。朝食を抜いて正解だったでしょう?」
「贈り物をそういう風に扱うのは良くないと思うけど」
「残念ながらこの日の為に減量済みよ」
ふふんと笑うルフレにシュルクは感心するやら呆れたものやら。
「シュルクは?」
「同じ部活の後輩の女の子に貰ったよ。義理だけどね」
オレはまだ貰ってないのに。パックマンはふて腐れた顔で振り返る。
「ミカゲ。お前は貰ったのかよ」
「拙者で御座るか!?」
それまで読書をしていたミカゲは話を振られ大袈裟に肩を跳ねて。
「は、恥ずかしながら貰う予定が……」
これは驚いた。クラス中で最もコミュニケーション能力に欠ける彼が。
「誰に?」
「アニキャラショップの店員さんで御座る!」
え?
「この時期になるとチョコレートが店に並ぶんだ。それをプレゼント用に包装してもらって、女の子の店員さんに袋なしで渡してもらえば擬似的に……!」
沈黙。
「今年は可愛い店員さんが入ったからもう楽しみで楽しみで」
「兄さんそのチョコ」
「あげてくれ。幾らでも」
バレンタインが生んだ哀れな格差社会。