スマ学200のお題
64.策士
悠久の時に思いを馳せ、奇跡の月を愛でる。
今日は百数年に一度の名月。後の十三夜とも云われるミラクルムーンを拝める日。
「兄さんは他の女の子から誘いを受けたりしないの?」
休み時間。教科書を片していたところ不意にルフレが訊ねた。
「もちろん受けたさ。でも断った」
「どうして?」
「いくら月が綺麗だといっても夜間だからね」
抜け目がない。兄のマークを見つめてルフレは思う。
「今夜は先生方も目を光らせるだろうな」
話を盗み聞きしたロックマンがくすっと笑った。
「お仕置きされるのは御免だな」
言葉遊びが上手いこと。
「ねえ兄さん」
ルフレは次の教科書を揃えて言った。
「月が綺麗ですね」
とある有名な小説家の一文。これを知らない人はそう居ないだろう。
今は真っ昼間だが兄ならどう返すのか、ふと気になったのだ。まさか「お前の方が綺麗だよ」なんてキメ顔で言い出しはしないだろう。いくら兄でもそれは……
「僕もちょうど同じことを思ってた」
ぱっと振り返るルフレに小さく笑いかけるマーク。
「当てが外れたかい?」
どっちつかずの一枚上手な返答に。
「……完敗だわ」
ルフレはふいと顔を背けた。