スマ学200のお題
59.趣旨
ここは、ダー組の教室。
「……なにしてんだ?」
教室に入って早々にスピカはきょとんとした。
「ハロウィンは死者の世界と生者の世界を繋ぐ扉が開く日…… 」
床には白く大きな紙が敷かれ、魔法陣が描かれている。その自作された魔法陣を取り囲むように、黒いフードを被ったダー組生徒が数人座っているも誰が誰やら。
「遥か昔その身を滅ぼした魔王サタンを復活させ、世界征服を――」
「そういう行事じゃねーよ、片付けろ」
誰か分からぬ人の頭を背後より踏み付けて吐き捨てる。
全く、ハロウィンといえばトリックオアトリートとお菓子か悪戯か選択を持ち掛けそのやり取りを楽しむ伝統的な行事だというのに。
「おはよっす」
ぽんと肩に手を置いて声をかけてきたのは。スピカが振り向くと同時に小包が差し出された。橙色の包装に緑のリボン、差し出した本人はにっこりと笑って、
「トリックイントリート!」
……ん?
「我ながら賢くねえ?」
ダークフォックスは誇らしげに自分の腰に手を置く。
「お菓子の中に何らかの薬を忍ばせて渡す! 悪戯も出来てまさに一石二鳥」
「番長に何てモン渡しやがるッ!」
一番重要なやり取りを全スルーかよ、と思ったのも束の間、制裁。下したのはもちろんダークウルフで、ダークフォックスの手から小包を奪い上げてしまった。
「……おい」
「何でしょう?」
「トリックオアトリート」
こいつくらいは趣旨を理解しているはず。
「全部ください」
さあ、いい加減ハロウィンという行事を楽しませ、
「……は?」
「番長に戴けるなら悪戯もお菓子も大歓迎です」
「ウルフ。あの台詞はお菓子くれなきゃ悪戯するぞという意味ですよ?」
「でしたらどうぞ、心行くまで悪戯してくださいませ」
駄目だこいつ。早く何とかしないと。