スマ学200のお題
52.口ベタ
「わっ、番長!」
それは昼休みでの出来事だった。
「見てください見てください! にゃんこですよにゃんこ、にゃーにゃー!」
食堂で昼食を済ませて、さあ教室に戻ろうと踏み出したその刹那。同席したダークゲムヲが学園の敷地内に入ってきた白猫を見つけて大はしゃぎで駆け寄った。それもこの白猫、逃げるどころか可愛らしく鳴いて彼女の足に擦り寄ってくる。
「ふにゃあ、美人ですよこの仔! もふもふ! にゃんにゃんにゃーん!」
どうも人懐っこい性格らしい。スピカと並んで遠目に眺めていたダークウルフもそこに興味を示したのか、歩を進めて近くに屈み込んだ。
にゃあ、と甘ったるい声で鳴いて小首を傾げる。くりくりとした大きな瞳に捉えられればさすがの狼もうっと声を洩らした。ダークゲムヲの腕の中、ダークウルフに喉元を指先で擽られ、優しい手付きで頭を背中を愛でられて。
「……、」
――羨ましくなんか。
「あっ番長も触ります?」
気付けばスピカが隣に立っていた。
すっと屈み込み、終始無言で寄り添う。ダークウルフが不思議そうに見つめる中、スピカは小さく口を動かした。息を呑んで、肩に擦り寄るようにして。
「に、……にゃあ……」
俺の頭も撫でろとばかりに――視線。
「番長……可愛すぎです……っ!」
きゅうんと理性パラメーター、SAN値なるものが急上昇。スピカを抱き締めて頭を撫でるダークウルフが、終始悶えていたのは言うまでもなく。