スマ学200のお題
51.絶望
GW。それは日々欠かさず勉学に励む学生たちに与えられた最高のご褒美――
「明日からゴールデンウィークだ」
こういった連休の直前には必ずといって行われる、全校集会。締め括りはもちろん、校長先生の長話だ。だがしかし、こいつさえ乗り越えれば天国が待っている。
「せいぜい楽しむことだな」
幸いなことに、校長であるマスターは長話を好まない。つまりこのひと言こそが彼の語りの最後であるのだ。ああ、何をしようか。何処に行こうか。
自由がやってくる! 楽しいGWの幕開けだ――!
「――が、忘れるなよ?」
それは完全なる不意討ちだった。立ち上がりかけた生徒もいたほどに。
「お前たちの休日は数多の犠牲の上で成り立っているということを」
講堂内が、ざわめく。
「それと今度のゴールデンウィークは四日しかない。六月は祝日がないので次のお楽しみは七月の後半に残された海の日だ」
マスターの口角がにやり、と吊り上がった。
「六月のじっとりとした空間の中、真っ白な紙切れと長時間向き合い、教師の戯言に耳を犯されることになるというのはさぞかし苦痛だろう。この連休はそんなお前たちの為“だけ”に“数多の犠牲の上で”与えられた“四日しかない”連休だ」
所々を強調しながら。最後、ぐさりと胸を突き刺す。
「以上を踏まえた上で堪能するんだな。ひと時の夢を」
先程とは打って変わって微笑。マスターは舞台を下りる。
「どうしよう……っゴールデンウィークが来ちゃうよ……!」
「ああぁ僕たちは誰かを犠牲に……!」
「やべえ、四日しかねえ! 俺たちに何が出来るっていうんだ!」
「所詮私たちは低脳で……無力なクズの塊よ……」
絶望の嵐。
「さっすが兄さん! バカ生徒たちを希望から絶望に蹴り落とすなんて!」
「褒めるなクレイジー。奴らが自ら谷底に飛び込んでいっただけのこと」
「いやそれをさせたのはあんただろ」
「さて。何のことだか」
レイアーゼ学園。校長の話は、恐ろしい。