スマ学200のお題


46.価値観


とある昼下がり。

「っ、」

――事件は唐突にやってくる。

「マルス! 鞄っ!」

今日は授業が午前のみだったので普段より遥かに早く下校することになったのだが、ちょっと暇潰しにと街を歩いていればこれである。後ろから走ってきた黒服の男とぶつかったかと思えば、マルスの通学用の鞄が取られてしまったのだ。

「あ……」
「いいではないか。大した物など入ってないだろう」

口を挟んだのはデデデ。

「そうなのか?」
「まあ、確かに財布も入ってたけど少しだけだし」
「……どのくらいなんだ?」

マルスはうーん、と唸って。

「六万くらいかな」
「ぶっ」

そう聞いておいて、吹き出したのはフォックスである。次の瞬間にはもう少しで見えなくなってしまいそうな男の背中を捉え、ソニック顔負けの音速で追いかける。

……遠くで何かの声が聞こえた。一同がぽかんとしていると、フォックスは息を弾ませながら帰ってきた。その手には、ひったくられたはずのマルスの鞄が。

「あ、ありが」
「お金は大切にしよう? な?」

……怖い。

「大袈裟な奴だ。そんなものははした金だろう」
「その金で何ヶ月暮らせると思ってるんだ!」
「どんな節約生活してきたんだこの人!」

富豪と貧民の価値観の差は激しい。
 
 
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