スマ学200のお題
142.春
昼休み。ダー組の教室。……のベランダ。
「春って何だ?」
「……ぁあ?」
優しく撫でるようなそよ風に涼みながら惣菜パンを食していればこれである。ダークリンクが眉を寄せながら機嫌よろしくない声と共に振り向けばそこに居たのはお馴染みの彼。
「ネットで調べろ」
「嘘は嘘であると見抜けない人には」
「あーあー悪かったよ馬鹿がよ」
そうは言ったところでこうして訊ねられたのもまた久しぶりの話である。以降無言となってじっと見つめるばかりのダークトゥーンをほんの一瞬横目に見て小さく溜め息をつく。
「……そうだな」
春──秋と並んで一年の中では最も気候が良いとされる穏やかな季節。緩やかな気温の上昇と共に冬の雪や氷が溶けて植物が芽を出す時期。
さてと。まともに答えるならグラウンドに咲いた桜の木を指し示すべきだろうか。はたまた生徒会に属している気に食わない餓鬼の名前が同じ名前だったはずだからふざけてみようか。
「……お前って好きな奴いんのか」
おっと。これは。
「急になによ」
すま組筆頭の煮え切らないコンビか。
「何だっていいだろ」
「いないわよ」
「そうかよ」
「……だから何なのよ」
「な、何だっていいっつったろ!」
まさかベランダに出ていたばかりにお隣クラスのこんな光景を拝むことになるとは。
「あれのこったな」
「分からん」
分からないのかよ。
「ただ」
ダークトゥーンは終始真顔のまま。
「爆発して欲しいことだけは分かった」
「それは分かる」