スマ学200のお題
139.フラグ
「チェックメイトで御座る!」
とある喫茶店にある屋根裏部屋。
「拙者の勝利に御座るー!」
大はしゃぎでゲームのコントローラーごと拳を振り上げるのはその口調からお察しの通りミカゲである。隣の丸椅子に座っていたジョーカーが注ぐ視線の先には、今時珍しいブラウン管のテレビと画面に映し出された"WIN"の文字。
「凄いな」
ぽつりと呟けばミカゲは瓶底眼鏡をぎらり。
「ドゥフフフフ……豪血寺一味の主人公のライバルの子孫であるこの隠しキャラクターはコマンド入力に一癖も二癖もあるもののシリーズ作品お馴染みの隠しコマンドさえ入力してしまえば操作難度がぐっと下がるので御座る……ファンの間では常識も常識の必須テクニックの一つであって」
オタク特有の早口である。
「おぅい! 蓮、ちょっと下りてこい!」
家主の声が響くとジョーカーは得意げにべらべらと語り続けるミカゲに一言断って立ち上がると階段を下りていった。残されたミカゲはわざとらしく咳払いをすると待っている間読書でもしようと立ち上がるもある物が目に入って注目する。
蓮の奴……端末を開いたまま席を外すとは恋仲の面前とはいえあまりに不用心で御座る。ここは拙者の良心に免じて端末を閉じておいてしんぜよう──そう思って何の気なしに端末を拾い上げれば画面が明るくなって検索欄が露わに。
二月二十二日。何の日。
そういえば今日という日は確か語呂合わせで巷で噂の猫の日だった希ガス……はぇ、忍者の日?
め……眼鏡?……わ……からせ……?
「ミカゲ」
寒気がする。
「今日はもう店を閉めて帰るそうだ」
何故か振り返れない。
「、……ああ」
事態に気付いたように呟いて。
「……見たのか」
不自然に背後に影が差す。
「今日はどうする。……ミカゲ」
フラグ。
「変態! 痴漢! ケダモノ! 帰ります帰りますっ! 帰らせていただきますううううっ!」
この後ミカゲが無事帰宅できたのかどうかは残念ながら定かではない。