スマ学200のお題
138.言質
「ぶえっくしょん!」
「──bless you!」
休憩時間。エス組の教室。
「うわ何びっくりしたんだけど!?」
パックマンが豪快にくしゃみをしたその直後離れた席にいたにも関わらず勢いよく席を立って指を差しながら叫んだのはテリーだった。
「おっと、驚かせたな」
テリーは驚きのあまり仰け反り状態だったパックマンの元へ歩み寄りながら説明する。
「俺の住んでいた英国じゃ、くしゃみをする奴が居たら皆すかさずそう叫んでたんだぜ?」
「なんで? 怖くない?」
「"bless you"は"お大事に"という意味だ」
本を閉じながらロックマンが口を開く。
「だからってびっくりするんだけど」
「それに関しては所謂英語圏特有の習慣というものだな。諸説あるが純粋に体や健康を労わる思い遣りの一言だ。深く考える必要はないさ」
それを聞くとパックマンは納得した様子。
「まーびっくりはしたけど面白かったしそういうことならいいよ。ありがと」
「肌寒い季節になってきたからな」
テリーは朗らかに笑いながら親指を立てる。
「文化の違いって面白いよね。パックマンは心が広いから何でも受け入れるけど」
「良い心掛けだな」
何故か偉そうに胸に手を置きながらパックマンが言うとロックマンはにっこりと笑って、
「パックマン」
「何?」
「Trick or Treat」
……ん?
「ハロウィンもう終わりましたけど」
「テリー」
「まあ……確かに英国じゃ十一月の二日までハロウィンは続いているな」
ロックマンは笑みを絶やさないまま、
「文化の違いは何でも受け入れると話したな」
「い、いやいやちょっと何待って、え?」
「それでお菓子は?」
「そもそも持ち込み禁止だろ!」
「持っていないんだな」
げ、
「放課後。教室に残るように」
言質を取られた……!?
「ズルだろズル! 会長の人でなしッ!」
「ハロウィンの仮装でこの中の誰よりも悪魔が似合うと揶揄ったのは何処の誰だったかな」
「んなもん根に持つなよ!」
その様子を眺めていたジョーカー。
「成る程……」
「成る程じゃない」
放課後空気を読んだクラスメイトが早々に教室を空けた結果パックマンがどうなったかというのは残念ながらまた別の話。