スマ学200のお題
135.地獄
ててててーてーてーてってれー!
「おい」
エス組の教室。
「誰だ。戦闘に勝った奴は」
保健体育の授業中。軽快な着信音にツッコミを入れるマリオにクラウドは無言で携帯端末を机の横に提げた通学用鞄の中から取り出し、通知を確認して電源を落とす──といったようにこの学園の生徒はどうも自己主張が激しい。
でれでれでれでれでーれん。
「復活の呪文はメモしてあるのか?」
「す、すみません」
指摘されたアルスは苦笑いを浮かべる。
「まったく」
全クラスの中でトップクラスの成績を誇るエス組の教室からまさか立て続けに、それもよりによって授業中に携帯の着信音が鳴り響いてくるものだとは思わなんだ──まあどれだけ他の先生に気に入られているクラスだろうと自分は容赦なく指摘させていただくわけだが……
『──何回やっても何回やっても』
ん?
マリオはゆっくりと振り返ってみる。
懐かしの某ボスが倒せないの曲を着信音に設定している輩がいる──ここまでの流れで行くとこの着信音を設定しているのはロックマンという話になるが生徒会長だぞ。有り得ない。テストの度に全教科満点を叩き出すあの化け物だぞ!
「……今の着信音」
マリオは慎重に口を開く。
教室内は思っていた以上に静まり返っていて先程までの流れと異なり誰も口を開かない。素直に白状するならフォローを入れてやりたいところだがとんでもなく気まずいことだろうな曲の元ネタである本人もいることだし。
「……すみません」
ようやく。そっと手を挙げたのは。
「自分です」
本人かよ!
「申し訳ありません」
「お、おう……気をつけるんだぞ」
気まずい。
「お前あれ心臓に悪すぎ」
授業後の休み時間。
苦情を申し付けたのはパックマン。
「そうか?」
ロックマンはきょとんとした様子で。
「面白いと思ったんだがな」
「笑うに笑えない地獄のような空気だったよ」
本人には申し訳ないが。
二度と味わいたくない空気感である。