スマ学200のお題


133.禁忌



「……ねえ兄さん」

それは何の変哲もないふとした疑問。

「なんでこの学校は参観日やらないの?」


黒背景に雷が駆け抜けた。


「……お前」

校長室。

「言ってはならないことを……」

所謂オーバーリアクションというもので顔を青くしながらペンを落としたのはマスターだった。

「だってもうすぐ父の日じゃん」
「プリントにすら記載していない俺の涙ぐましい配慮を無駄にするつもりか」

何が問題なんだよと言いたげに眉を寄せるクレイジーに対し、それまで厚みのある椅子に腰掛けてデスクと向き合っていたマスターは手元にあった一枚の紙を手に取りひらひらと揺らす。

「配慮って」
「いいかクレイジー」

マスターは紙を置いて真剣な表情。

「この学園の生徒における家庭環境は──重い」


今度はクレイジーの背景に雷が駆け抜けた。


「死別しているとはっきり明確に分かっているなら寧ろ可愛い方だろう──生徒の中にはそもそもが不仲だったり一族間の仕来りの関係で体裁が悪かったり親にその気がなくとも子が一方的な苦手意識を持っていたり蟠りがあったり」

エトセトラ。

「……その中で参観日なんて開催してみろ」

マスターは静かにとどめの一言。

「地獄だぞ」


説得力。


「それはそれで見てみたい気もするけど」
「メタ的な観点で言えばダークシャドウの連中の参観日が面白いことになるからな」


この世界には触れてはいけないことがある。


禁忌タブーってことね」

途端、見計らったように校長室の扉が開いて。

「よんだ?」
「呼んでない」
 
 
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