スマ学200のお題
119.威厳
とあるチョコレート菓子販売店。
「いらっしゃ」
バイトとして働いていたサムスはギョッとした。
「……いらっしゃいませ」
対面していたのは全校中最も優秀と謳われるクラスであるエス組生徒の中でも秀でて扱い難いと噂されているカズヤだったのだ。その傍らには並んで扱い難いとされているキングクルールと少し離れてリドリーの姿が。まさか夜の八時ともなろうという遅い時間に制服姿の彼らとこんな形で会うことになるなんて──校則に違反しているけれど私も私でこの時間までバイトをしているし。
「おい」
サムスはぎくりと肩を跳ねる。
「これで全部だろうな?」
カズヤが言うのは会計カゴの中のチョコレート菓子のことだろう。どれも新作ばかりである。
「……新作はこれで全部です」
「いいだろう」
「全部頂くぜえ?」
まさか。……万引きするつもりじゃ、
「このカードで」
ブラックカード。
「……かしこまりました」
強面の三人組が新作のチョコレート菓子を。
カードで購入。
「ありがとうございました」
ポーカーフェイスは得意な方だった。会計を済ませて袋詰めを終えて手渡すとそれまで携帯端末を弄っていただけだったリドリーが進み出る。
「おい。お前」
──ばれてしまった!?
「スターボックスは何処にある?」
ええ……
「左の交差点を渡った先のビル二階です」
新作ドリンクの販売日だっけ。
「どうも」
三人は無事退店。
「知り合いだった?」
ジト目で見送るサムスに別店員が声をかける。
「……いえ」
何も見なかったことにしよう。