スマ学200のお題
114.初笑い
レイアーゼ学園には無敵の生徒会が存在する。
生徒会の一員──書記のハル。
彼は……笑わなかった。
「何をしているの」
昼休み。
「げっ生徒会の」
「書記の……」
「ハルだよ」
顔を引き攣らせながら振り返り、口々に言うディディーとトゥーンに続けてハルが名乗る。
「草抜きを手伝ってくれているんだ」
「奉仕活動ってこと?」
ここは中庭。庭師であるオリマーがそう答えるとハルは不審そうに彼ら二人を見つめた。
「ほ、ほんとほんと!」
「別に四つ葉のクローバーなんて探してねーし」
四つ葉のクローバー。
「言ってるじゃん」
その様子を見ていたピチカは呆れ顔。
「奉仕活動は建前で四つ葉のクローバー探し?」
「ひ、人聞きの悪いことを言うっ」
「俺らはいいけど言い出したのはピチカだし」
ハルは目を細める。
「四つ葉のクローバーを見つけたら幸せになれるんだよー!」
……くだらない。
「この辺にたくさん生えているよ」
「えっ?」
ハルが中庭に入るなり屈み込んで拾い上げたのは──確かに四つ葉のクローバーである。
「ほんとだー!?」
「白詰草。その成長過程で人や動物に踏まれたりして傷が付くと遺伝子変異を起こす。その結果が四つ葉のクローバー。……ほら。ここにも」
ハルは説明を終えると冷めた目でその手に持った四つ葉のクローバーを見つめながら。
「珍しくないよ。別に」
おいおい。夢のないことを。思わずディディーとトゥーンが口を挟もうとすると。
「じゃあ幸せがいっぱいってことだね!」
我らが天使の反撃。
「踏まれて出来るって言ったよね」
「うん」
「幸せだと思う?」
するとピチカはハッとしたように。
「そっか……踏まれたのに幸せってことはリオンみたいなのがいっぱいってことだよね……確かにそれはちょっと嫌かも……」
その発想はなかった。
「ふっ」
これには思わずハルも吹き出す。
「あ、笑った!」
ピチカはすかさず指摘して笑いかける。
「えへへ。ハル君の初笑いだね!」
不意に奪われるものがある。
「……そうだね」
その様子を眺めていたディディーとトゥーン。
「こ、これだからピチカは……」
「恋のライバル増やすなよなぁぁ……!」