スマ学200のお題


113.才能



手作り弁当。

いいじゃないか。興味がある。どんなに形が崩れていても多少その味に首を傾げるものがあっても愛を込めて作ったものなら尚のこと。


重要なのは。

結果ではなくその過程。……そうだろう?


「兄さん!」

夢見るだけならどうとでも。

「食べてほしいものがあるんだけどっ!」


昼休み。校長室の扉を破壊する勢いで開けたのはクレイジーである。

「……お前が?」

こうは言いたくはないが言わざるを得ない。

「そ……そりゃ僕料理なんてからきしだけど」

そっと後ろ手で扉を閉めて。肝心のそれを後ろに隠しながら。恥じらいに頬を染めながら。

「……兄さんに……食べてほしくて」

可愛い。

「出してみろ」

マスターは本音を一切顔には出さないまま予め持参しておいた弁当箱をデスクの端に寄せた。クレイジーはゆっくりと歩み寄ると。

「、はい」
「何だこれは」
「知育菓子」


知育菓子。


「……クレイジー」
「だ、騙されたと思って!」

順序に沿って混ぜて練るだけのタイプ。

「味見は?」
「してない」

マスターは一瞬無言になったが口へ運ぶ。

「クレイジー」
「うん」
「才能があるな」
「ほんとっ!?」

マスターはプラスチックスプーンで掬ったそれを笑顔でクレイジーの口の中に突っ込む。

「にっっっがぁぁ!?」

もういっそ買ってきたものを作ったとうそぶいて出された方がマシだな。マスターは混乱しながら水を求めるクレイジーを目に静かに溜め息を吐いた。
 
 
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