スマ学200のお題
107.壁ドン
「おい」
昼休み。どすの利いた声とオーラで廊下の壁に背中を預けながらマルスと話していたマークに壁ドンを仕掛けたのはリドリーである。そうは言っても決してロマンチックなものではなく当の本人は頬に青筋を浮かべていて虫の居所が悪い様子。
「先公にチクったのはテメーかぁ?」
「……覚えがないね」
優秀なクラスメイトばかりが集うエス組の中でも飛び抜けて素行の悪い彼だが、どうやら日頃の行いを言い付けられたのか一時間近く捕まっていたらしい。どうりで見掛けなかったわけだ。
「罪を重ねるのは感心しないな」
マルスが口を挟むとリドリーは舌打ち。
「リドリー!」
と。声が聞こえたのでそちらを見てみればシュルクがずかずかと歩みを進めていた。これ以上ギャラリーが増えればそれだけ目を付けられるだけと判断したのかリドリーは最後にマークをひと睨みしてその場から退散。
「大丈夫だった?」
「平気だよ」
「マークは気が強いね」
あんなに顔を詰められていたのに顔色ひとつ変えないなんて。
「生徒会の副会長ですから」
「受け売りってことだね」
マルスがくすくすと笑っていると。
「あはははっ!」
駆けていくジュニアにシュルクがぶつかった。その後をハルやパックンフラワーが追いかけていく姿を目に危ないなと思いながら。
「大丈夫?」
マルスが振り返ると。
「あ」
計らずもよろけた拍子に付いた手が壁ドンするような形となってしまったシュルクと。その餌食となってしまい顔を赤くするマークの姿が──
「ごごご、ごめん!」
「え、……あっ、いや」
対するシュルクも顔を赤くして飛び退くので初々しいったらありゃしない。
「好きな人が相手なら別ってことだね」
「……へっ!?」
これだけ分かりやすいのに。この期に及んでまだバレていないと思っている約二名。