スマ学200のお題
104.戸締まり
「待てええぇえッ!」
冒頭から放課後の廊下に響き渡るマリオの声。また何を仕出かしたのかは知らないが追われているのはお馴染みロイとカービィである。
「うーわ。しつこっ」
「それしかやることねーんじゃん?」
「絶対に許さん!」
丸聞こえである。
「カービィ!」
ロイが呼ぶとカービィは察して頷いた。視線の先の部屋に飛び込んで扉を閉めようとするも直後に追い付いたマリオが扉に飛び付いて抵抗。
「かけまくもかしこき日不見の神よ!」
何処かで聞いたような台詞。
「遠つ御祖の産土よ!」
「久しく拝領つかまつったこの山河!」
ロイとカービィは気迫たっぷりに口々に台詞をなぞり扉を閉めようとしながら。
「かしこみかしこみ謹んで」
「──お返し申す!」
遂に閉まったのと同時に扉の鍵を掛ける。
「よっしゃあ!」
扉の向こう側からは扉を叩く音。ロイとカービィがハイタッチを交わしたのも束の間。
「──例の映画の台詞か」
ギクッ。
「なかなかよく覚えているじゃないか」
光沢のある茶色のデスクの上に肘を付いて指の背に顎を乗せながら眺めていたのは。
「こ、校長……」
ロイとカービィが顔を引き攣らせながら呼ぶとマスターは対照的に満面の笑みを浮かべて。
「さて」
後ずさる二人に影が差す。
「開いた扉の奥は現世か常世か」
紅蓮が灯る。
「……どちらだろうな?」
「いやああぁあああ!?」
現実は映画のように上手くいかない。