1:出逢い
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雨宮 静ーーー29歳
容姿端麗で頭脳明晰
しっかり者で人望も厚くその上明るい性格の彼女は、某大手商社オフィスの華としてOL生活早7年目を迎えた。
7月中旬
もうすっかり真夏の気候である外とは対照的に、エアコンのよく効いた社内で今日もひたすら仕事に打ち込む静
「雨宮君、会議の資料は?」
「もう用意できてます」
「静先輩、ミスプリントの処理って……」
「さっきしておいたよ」
「ねぇ静、今日飲みに行かない?」
「わぁ、行きます!」
「あ、雨宮さん僕も……」
部長・後輩・先輩・同僚ーーーあらゆる方面からかけられる言葉にすべて笑顔で答える
仕事もテキパキこなしある程度付き合いも良い
そんな静は29歳になった今も、アイドルからマドンナへと呼び名を変え常にオフィスの中心にいた。
「あ、そうだ。次の会議に使いたい資料がもう1つあるんだが……誰か取ってきてくれないか?」
部長の呼びかけに静が手を上げる
「私、取ってきます」
「雨宮君か、忙しくないかい?」
「大丈夫です。ちょうど一段落したところなので」
「先輩、私行きますよ!」
「大丈夫」
慌てて立ち上がる後輩に微笑むと、静はパソコンを閉じて立ち上がった。
「部長、資料室にありますか?」
「いや、悪いが地下倉庫の方だと思うよ。だいぶ古いものだから……」
大手だけあって過去資料の数は半端ではない
データ化も進めているがなかなか追いつかず、資料室に収めきれなくなった古い資料は地下にある倉庫へと運ばれるのだ
そこから探し出すのは容易ではない
「わかりました。行ってきます」
「頼んだよ」
資料の内容を聞いた静は、皆に見送られながら足早に倉庫へと向かった。
地下倉庫へは中央エレベーターで1階まで降りたあと、隅にある荷物用の古いエレベーターに乗り換えなければいけない
静は足早に歩きながら小さくため息をついた。
あそこ苦手なのよね……
地下へは滅多なことがない限り誰も近付かない
こうして荷物用エレベーターへ向かう細い廊下ですら、ただ1人ともすれ違わない
ーーー静はひどく怖がりだった
一瞬で見つけ出してさっさと帰りたい……けれどちょっと難しそう
「そんな資料、見た覚えないなぁ……」
古く汚らしいエレベーターに乗り込みまた嘆息
内装もボロボロなそのエレベーターは、不気味な音をたてながら静を地下へと運んだ。
* * * * *
コツーーコツーー……
薄暗い廊下に響く自分の足音でさえ不安を煽る
「もうほんとやだ……早く探して帰ろっ!」
なんとなく大きめな声で独り言を言いながら、足早に辿り着いた一番奥の個室
カチャリと鍵を開けて中に入ればもちろん真っ暗
急いで電気のスイッチを押すと、一瞬で視界が明るくなった。あぁ、とりあえず一安心!
「さて、と……」
キョロキョロと部屋の中を見回すが、あまりの物の多さと乱雑さに眩暈がした。
微かな埃っぽさに眉を顰め取り出したハンカチを口元に添える
「こんなところから見つけだせるのかしら……」
げんなりと呟きながらもとりあえず近くにあった紙の束を手に取ったその時
カツーーカツーー
不意に廊下から聴こえた音に、静は身を硬くして振り返った。
足音?
まさか……
今までここで誰とも会ったことないし……
気のせい??
カツーーカツーー
じゃないっ!!
廊下を歩いてくる革靴らしい足音は、明らかにこの部屋へと向かってきている
「なによ……なんなの……?」
静は身動きも取れないまま泣きそうになった。
もしかしたら後輩の子が手伝いに来てくれたのかも
それか違う部署の人が何か探しに来たとか
そう考えようとしても、静の頭には【お化け】の3文字が飛び回っていて
隠れることすらできずただ立ち尽くしていたら、ついに足音は扉の前まで来て止まった。
一瞬の静寂のあと
キィ――……
小さな音を立てて開いた扉の向こうから、人影が入ってきた瞬間
「キャーーッッ!!!」
静は思い切り悲鳴を上げていた。
「なっ……」
「いやぁっっ!!」
「ちょ……っ」
「来ないでぇっっ!!」
その場にうずくまり叫び続ける静
その頭に突然優しく置かれたのはーーー大きな、手?
それは温かく優しく、明らかに【人】の感触で……
静が恐る恐る顔を上げると、男がしゃがんで覗き込んできた。
「あの……大丈夫ですか?」
落ち着いた声音と真っ直ぐ見つめる瞳
静の頭を優しく撫でながら笑うその人は
「お化け……じゃない……?」
ブハッ
静の一言に、男が思い切り吹き出した。
「お化け……じゃ…ないです……クッ…」
肩を震わせ口を隠しながら答える男
その様子を呆然と眺めていた静の頬は、次第に赤く染まっていった。
「ご、ごめんなさい……」
下を向いて呟くと、男は笑うのをやめて咳払いをした。
「いや、こちらこそ驚かせてすみません」
「いえ、あなたは何も悪くないわ。本当にお騒がせしました」
慌てて立ち上がり照れ隠しに笑うと、続いて立ち上がった男に改めて視線を向ける
スラッとした長身
端正な顔立ち
整えられてはいるけれど少し無造作な黒髪と、どこか着崩した服装が若さを感じさせる彼はーーー
「あ……和泉君?」
静の言葉に、男は目を見開いた。
「和泉遼君でしょ?営業部の」
「え、俺のこと……」
言葉に詰まるほど動揺している様子に多少首を傾げながらも、静は得意げに微笑んだ。
「知ってるわよ~営業部のルーキーにしてエース!今月、入社3ヶ月目で営業成績トップになったんでしょ?うちの部署まで大騒ぎだったもの」
「あぁ……」
照れているのか下を向いて微かに笑う遼へ右手を差し出し
「初めましてよね?私はーー」
「知ってますよ。雨宮静さん」
「あら」
「経営戦略部のマドンナ。知らない人はいませんよ」
「それは他の女の子より長く働いているからよ」
だいたいの子は入社5年目くらいまでで寿退社
私はもう7年目だし……と笑ったら、差し出した右手をそっと握られ
「よろしーーきゃっ!?」
不意にその手を強く引っ張られた。
予想外のことに反応が遅れた静は、そのまま力強い腕に抱き締められて身を強ばらせる
「なっ……離して!」
勢いよく顔を上げると、触れるほどの至近距離に綺麗な顔があった。
真っ直ぐに見つめてくる遼の瞳はやけに色気があって、なんだか気恥ずかしくなってしまう
「は、離しなさい!」
「本当に美人ですね。なんで結婚しないんですか?」
若者特有の無遠慮な質問に、静は眉を寄せてそっぽ向いた。
「関係ないでしょ」
「社長の愛人だからって噂、本当ですか?」
「なっ!?そんなわけないでしょ!?」
そんな噂たってるの!?
驚いて再び顔を上げると、遼は微笑して続けた。
「じゃあお偉い男性社員の夜の相手までしてるって噂は?」
夜の相手ーーー?
意味がわからず一瞬ポカンとした静
その様子を見て、遼は少し安堵したように小さく笑った。
「デマか」
「あっ……当たり前でしょっっ!?とにかく離して!!」
広い胸に手を当てて思い切り押し退けようとするが、まったく動かない
ドンドンと拳で叩くが反応はない
それどころか薄く笑って見下ろしてくる端正な顔を、静は思い切り睨みつけた。
「ふざけるのもいい加減にしなさいっ!」
「じゃあ静さんは誰のものでもないんだ?」
静の言葉を完全に無視し、遼が呟く
「え……?」
更に眉を寄せる静
その瞳を覗き込むようにして、遼は口を開いた。
「ねぇ、俺専用になって?」
俺、専用……?
意味がわからない
「なに……?」
理解できず首を傾げる静に、遼は満面の笑みで答えた。
「俺だけのものになって」
「……どういう意味?」
「そのままの意味」
「……?」
「とりあえずは、夜の相手でもいいよ」
ーーーは?
この子は何を言っているのかしら
最近の若い子の思考は理解できないわ
「なんの冗談?悪いけど私忙しいのよ」
呆れて嘆息しながら横を向いたその時、背中に回されていた遼の手が不意に動いた。
いやらしい動きで背中をなぞりあげるその手つきに、静がびくりと震える
「なっ……」
そのまま首を這い後頭部へ添えられた大きな手
しっかりつかまえられていて、背けようとしても顔が動かせない
「あのね、和泉君ーー」
静が本気で怒ろうと口を開いた時だった。
後頭部の手に力が込められ、不意に遼の顔が迫り
「!?」
声を上げる間もなく、重なった唇
容姿端麗で頭脳明晰
しっかり者で人望も厚くその上明るい性格の彼女は、某大手商社オフィスの華としてOL生活早7年目を迎えた。
7月中旬
もうすっかり真夏の気候である外とは対照的に、エアコンのよく効いた社内で今日もひたすら仕事に打ち込む静
「雨宮君、会議の資料は?」
「もう用意できてます」
「静先輩、ミスプリントの処理って……」
「さっきしておいたよ」
「ねぇ静、今日飲みに行かない?」
「わぁ、行きます!」
「あ、雨宮さん僕も……」
部長・後輩・先輩・同僚ーーーあらゆる方面からかけられる言葉にすべて笑顔で答える
仕事もテキパキこなしある程度付き合いも良い
そんな静は29歳になった今も、アイドルからマドンナへと呼び名を変え常にオフィスの中心にいた。
「あ、そうだ。次の会議に使いたい資料がもう1つあるんだが……誰か取ってきてくれないか?」
部長の呼びかけに静が手を上げる
「私、取ってきます」
「雨宮君か、忙しくないかい?」
「大丈夫です。ちょうど一段落したところなので」
「先輩、私行きますよ!」
「大丈夫」
慌てて立ち上がる後輩に微笑むと、静はパソコンを閉じて立ち上がった。
「部長、資料室にありますか?」
「いや、悪いが地下倉庫の方だと思うよ。だいぶ古いものだから……」
大手だけあって過去資料の数は半端ではない
データ化も進めているがなかなか追いつかず、資料室に収めきれなくなった古い資料は地下にある倉庫へと運ばれるのだ
そこから探し出すのは容易ではない
「わかりました。行ってきます」
「頼んだよ」
資料の内容を聞いた静は、皆に見送られながら足早に倉庫へと向かった。
地下倉庫へは中央エレベーターで1階まで降りたあと、隅にある荷物用の古いエレベーターに乗り換えなければいけない
静は足早に歩きながら小さくため息をついた。
あそこ苦手なのよね……
地下へは滅多なことがない限り誰も近付かない
こうして荷物用エレベーターへ向かう細い廊下ですら、ただ1人ともすれ違わない
ーーー静はひどく怖がりだった
一瞬で見つけ出してさっさと帰りたい……けれどちょっと難しそう
「そんな資料、見た覚えないなぁ……」
古く汚らしいエレベーターに乗り込みまた嘆息
内装もボロボロなそのエレベーターは、不気味な音をたてながら静を地下へと運んだ。
* * * * *
コツーーコツーー……
薄暗い廊下に響く自分の足音でさえ不安を煽る
「もうほんとやだ……早く探して帰ろっ!」
なんとなく大きめな声で独り言を言いながら、足早に辿り着いた一番奥の個室
カチャリと鍵を開けて中に入ればもちろん真っ暗
急いで電気のスイッチを押すと、一瞬で視界が明るくなった。あぁ、とりあえず一安心!
「さて、と……」
キョロキョロと部屋の中を見回すが、あまりの物の多さと乱雑さに眩暈がした。
微かな埃っぽさに眉を顰め取り出したハンカチを口元に添える
「こんなところから見つけだせるのかしら……」
げんなりと呟きながらもとりあえず近くにあった紙の束を手に取ったその時
カツーーカツーー
不意に廊下から聴こえた音に、静は身を硬くして振り返った。
足音?
まさか……
今までここで誰とも会ったことないし……
気のせい??
カツーーカツーー
じゃないっ!!
廊下を歩いてくる革靴らしい足音は、明らかにこの部屋へと向かってきている
「なによ……なんなの……?」
静は身動きも取れないまま泣きそうになった。
もしかしたら後輩の子が手伝いに来てくれたのかも
それか違う部署の人が何か探しに来たとか
そう考えようとしても、静の頭には【お化け】の3文字が飛び回っていて
隠れることすらできずただ立ち尽くしていたら、ついに足音は扉の前まで来て止まった。
一瞬の静寂のあと
キィ――……
小さな音を立てて開いた扉の向こうから、人影が入ってきた瞬間
「キャーーッッ!!!」
静は思い切り悲鳴を上げていた。
「なっ……」
「いやぁっっ!!」
「ちょ……っ」
「来ないでぇっっ!!」
その場にうずくまり叫び続ける静
その頭に突然優しく置かれたのはーーー大きな、手?
それは温かく優しく、明らかに【人】の感触で……
静が恐る恐る顔を上げると、男がしゃがんで覗き込んできた。
「あの……大丈夫ですか?」
落ち着いた声音と真っ直ぐ見つめる瞳
静の頭を優しく撫でながら笑うその人は
「お化け……じゃない……?」
ブハッ
静の一言に、男が思い切り吹き出した。
「お化け……じゃ…ないです……クッ…」
肩を震わせ口を隠しながら答える男
その様子を呆然と眺めていた静の頬は、次第に赤く染まっていった。
「ご、ごめんなさい……」
下を向いて呟くと、男は笑うのをやめて咳払いをした。
「いや、こちらこそ驚かせてすみません」
「いえ、あなたは何も悪くないわ。本当にお騒がせしました」
慌てて立ち上がり照れ隠しに笑うと、続いて立ち上がった男に改めて視線を向ける
スラッとした長身
端正な顔立ち
整えられてはいるけれど少し無造作な黒髪と、どこか着崩した服装が若さを感じさせる彼はーーー
「あ……和泉君?」
静の言葉に、男は目を見開いた。
「和泉遼君でしょ?営業部の」
「え、俺のこと……」
言葉に詰まるほど動揺している様子に多少首を傾げながらも、静は得意げに微笑んだ。
「知ってるわよ~営業部のルーキーにしてエース!今月、入社3ヶ月目で営業成績トップになったんでしょ?うちの部署まで大騒ぎだったもの」
「あぁ……」
照れているのか下を向いて微かに笑う遼へ右手を差し出し
「初めましてよね?私はーー」
「知ってますよ。雨宮静さん」
「あら」
「経営戦略部のマドンナ。知らない人はいませんよ」
「それは他の女の子より長く働いているからよ」
だいたいの子は入社5年目くらいまでで寿退社
私はもう7年目だし……と笑ったら、差し出した右手をそっと握られ
「よろしーーきゃっ!?」
不意にその手を強く引っ張られた。
予想外のことに反応が遅れた静は、そのまま力強い腕に抱き締められて身を強ばらせる
「なっ……離して!」
勢いよく顔を上げると、触れるほどの至近距離に綺麗な顔があった。
真っ直ぐに見つめてくる遼の瞳はやけに色気があって、なんだか気恥ずかしくなってしまう
「は、離しなさい!」
「本当に美人ですね。なんで結婚しないんですか?」
若者特有の無遠慮な質問に、静は眉を寄せてそっぽ向いた。
「関係ないでしょ」
「社長の愛人だからって噂、本当ですか?」
「なっ!?そんなわけないでしょ!?」
そんな噂たってるの!?
驚いて再び顔を上げると、遼は微笑して続けた。
「じゃあお偉い男性社員の夜の相手までしてるって噂は?」
夜の相手ーーー?
意味がわからず一瞬ポカンとした静
その様子を見て、遼は少し安堵したように小さく笑った。
「デマか」
「あっ……当たり前でしょっっ!?とにかく離して!!」
広い胸に手を当てて思い切り押し退けようとするが、まったく動かない
ドンドンと拳で叩くが反応はない
それどころか薄く笑って見下ろしてくる端正な顔を、静は思い切り睨みつけた。
「ふざけるのもいい加減にしなさいっ!」
「じゃあ静さんは誰のものでもないんだ?」
静の言葉を完全に無視し、遼が呟く
「え……?」
更に眉を寄せる静
その瞳を覗き込むようにして、遼は口を開いた。
「ねぇ、俺専用になって?」
俺、専用……?
意味がわからない
「なに……?」
理解できず首を傾げる静に、遼は満面の笑みで答えた。
「俺だけのものになって」
「……どういう意味?」
「そのままの意味」
「……?」
「とりあえずは、夜の相手でもいいよ」
ーーーは?
この子は何を言っているのかしら
最近の若い子の思考は理解できないわ
「なんの冗談?悪いけど私忙しいのよ」
呆れて嘆息しながら横を向いたその時、背中に回されていた遼の手が不意に動いた。
いやらしい動きで背中をなぞりあげるその手つきに、静がびくりと震える
「なっ……」
そのまま首を這い後頭部へ添えられた大きな手
しっかりつかまえられていて、背けようとしても顔が動かせない
「あのね、和泉君ーー」
静が本気で怒ろうと口を開いた時だった。
後頭部の手に力が込められ、不意に遼の顔が迫り
「!?」
声を上げる間もなく、重なった唇
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