脚本版
ナレーション「ユリはいつも通りの時間に起きて、いつも通りに自転車に乗って、通勤するはずたった。けれど、この日は違った」
ユリ「ご馳走さまでした」
ナレーション「ユリは朝ごはんを食べ終え、化粧をして、出かける準備をして、いつも通り駐輪場に向かった。ここまでは、いつもと変わらない日常だった。しかし、この後が違った。駐輪場に男が寝ていたのだ」
ユリ「えっ?」
ナレーション「ユリの足が止まった」
ユリ「何でこの人こんなところで寝ているの?酔っぱらいかしら?まあ、そんなことよりも、私の自転車」
ナレーション「ユリは自分の自転車を目で探す。右左右左。だが、自転車を見つけることができなかった」
ユリ「何でないの?」
ナレーション「代わりに、ユリの自転車が置いてあったと思う場所に男が寝ていた。……もしかしたら、この男が何か知っているかしれないと思い、ユリは恐る恐る男に近付いて、声をかけた」
ユリ「すみません」
アレックス「う、うーん」
ナレーション「男は尻をボリボリと掻きながら起き上がる」
アレックス「ふわぁー、おはよう」
ユリ「おはようございます」
ナレーション「ユリは反射的に、見ず知らずの男に対して挨拶を返していた」
ユリ「あの、すみません。私の自転車知りませんか?ピンクフレームの自転車なんですけど?」
ナレーション「ユリは恐る恐る男に訊いてみた」
アレックス「ん、ああ」
ナレーション「すると男は、にっこりと笑みを浮かべると、いきなり四つん這いなり、尻をユリに向かって突き出して来たのだ」
アレックス「さあ、どうぞ」
ユリ「はあ?」
ナレーション「ユリの目は点になった。男の行動の意味がわからなかったからだ」
ユリ「……あの、どう言うことでしょうか?」
アレックス「でう言うことでしょうか?って、そりゃあ俺に乗れってことよ。ほれ、いつものように」
ナレーション「そう答えて、男はさらにユリに向かって尻を突き出して来た」
アレックス「ほれほれほれほれ」
ナレーション「男は尻まで振り出した。ユリは変態だと思った。」
ユリ「どうやって撃退しようかしら。変に刺激するのは良くないわよね」
ナレーション「ユリが考えていると、男の行動はさらに激しくなった。尻を大きく振りながら、ユリに近付いて来たのだ」
ユリ「ギャー、変態!」
ナレーション「ユリは思わず、近付いて来た男の尻を手で、思い切り叩いていた」
アレックス「痛ぁ!」
ナレーション「男は叩かれた尻を押さえながら、その場にゴロゴロと転がった」
アレックス「何するんだユリ?」
ユリ「何するんだ?って、それはこちらのセリフよ!」
アレックス「そりゃあないよ。ユリ」
ナレーション「しょぼんとする男」
ユリ「その時私に、一つの疑問が浮かんだ。なぜこの男、私の名前を知っているの?男とは、初対面のはずだ。男の顔に見覚えはない。……まさかストーカー!?」
ナレーション「ユリは戦慄した。でもユリは恐怖心を押さえながら、男に訊いてみる」
ユリ「あの、何であなたは私の名前を知っているのですか?」
ナレーション「男は、即座に自信満々で答える」
アレックス「俺はユリね相棒だからな!」
ユリ「相棒?」
ナレーション「ユリは眉根を寄せる」
アレックス「何だ?俺の姿を忘れちまたったのか?俺だよ。アレックスだ」
ユリ「ええ!?」
ナレーション「アレックス。ユリはその名前を聞いたとたん、稲妻な走られたような衝撃が脳内を駆け巡った。アレックスとは、ユリが己の自転車につけた名前だったからだ。ユリしか知らないはずの名前。ユリのアレックスは自転車で、断じて人の姿はしていない」
ユリ「私のアレックスは自転車よ?」
アレックス「おう、俺がその自転車のアレックスだ!」
ナレーション「男は、自分自身を指差しながら、自信満々な表情で言った。ユリは困惑する」
ユリ「あなた、どう見ても人間よ」
アレックス「俺のどこが人間よ。俺はどう見ても自転車ーー」
ナレーション「そこで、男の言葉と視線が止まった」
アレックス「な、なんじゃこりゃあー!!」
ナレーション「男は、目をしばたたかせながら驚いていた」
アレックス「何で俺人間なの?」
ユリ「そんなこと、私が知るか!」
ナレーション「ユリは男の問いに大声で返していた」
アレックス「そーですよね」
ナレーション「お互いに困惑する」
ユリ「仮に、あなたがアレックスだとして、証拠はあるの?」
アレックス「証拠。証拠かぁ?」
ナレーション「男は腕を組んで考える」
アレックス「ユリの名前は証拠にならないよな?」
ユリ「当然」
アレックス「だよな。証拠。何が証拠になるんだ?」
ナレーション「ユリも腕組みして考えた」
ユリ「そうね。私しか知らない情報を言い当てられるなら、あなたがアレックスだと、信じられるかましれない」
アレックス「そうだな」
ナレーション「男は再び腕を組んで考える」
アレックス「うん。これはどうだ?ユリ、お前は自分で自転車のタイヤの空気を入れることがない」
ナレーション「ユリはドキリとした。確かにユリはアレックスのタイヤの空気を自分では入れたこたがない。だがこれだけでは決定打に欠ける。家族なら知っていることだからだ」
ユリ「確かに私はアレックスのタイヤの空気を入れたこたがないわ。だけどこれは私だけ知っている情報ではないわ。この情報では決定打に欠けるわ」
アレックス「決定打かぁ」
ナレーション「男は唇を尖らせながら考える。男は、パシリと両手を打ちならした」
アレックス「ふふん。ユリと俺しか知らないことを思い出したぞ」
ユリ「それは何?」
ナレーション「男はユリを指差しながら言った」
アレックス「ユリ。お前は、イボ痔だ!」
ナレーション「その通りだった。このことは家族にも内緒なユリの秘密」
ユリ「アレックス!」
アレックス「ユリ!」
ナレーション「ユリとアレックスは抱き合った。しかしそこですべてが暗転した。
軽く肩を叩かれる衝撃でユリは起きた。起きるとそこは駐輪場ではなく、穏やかな音楽のな流れる喫茶店だった」
アレックス似の店員「お客様、閉店のお時間でございます」
ユリ「あ、はい。すみません」
ナレーション「ユリが慌て顔を上げると、そこには制服を着たアレックスの姿があった」
ユリ「アレックス!?」
終わり
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