ホラー集

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 チリーン、チリーン。
 パチパチパチパチ。
「おめでとうございます。3等が当たりました」
 たまたま寄ったデパートで買い物をした私は、福引き券で、当たりを引いたみたいだった。
「3等は、若返りドリンクセットでございます」

 ああ、私は醜いな。72にして思う。
 太ってはいないものの、身体中皺だらけだ。胸だって、垂れている。昔は大きくて、自慢のおっぱいだったのに。
 若返りドリンク。どうせ健康ドリンクの類いだろう。この時はそう思っていた。本当に効果を実感するまでは。

 私は家に帰り、色々やっているうちに寝る時間になっていた。
 私は寝る前に、福引きで当てた若返りドリンクを飲んでみることにした。
「味は栄養ドリンクね」

 その次の朝、起きて鏡を見てみると変化があった。
 顔の皺か減っていた。そして、化粧のノリもいつもより良かった。
 本当に若返りしてる!?

 効果を実感した私は、その日の寝る前にも若返りドリンクを飲んで寝た。

 翌日、鏡を見て顔が綻んだ。
 老婆ではない私がいた。50前後の私が。
 着実に若返りしている。このドリンクは本物だわ。
 残りのドリンクは3本。今の調子で1日1本飲んで行けば、20歳前後まで若返りできる。
 はやる気持ちを抑えて私は、夜を待った。

 ドリンクを飲んで寝る。

 翌日、さらに若返りした私がいた。白髪は変わらないが、艶は戻って来ていた。
 せっかく若返りしてきたのだから、何かしたいと思った。
 人と遊びたいと思った。でもどうすれば良い。
 スマホでSNSを何気なく見ていたら、マッチングアプリの広告が出てきた。
「これだ!」

 マッチングアプリ。これで、人と遊べる!
 写真を自撮りして、少し加工してから、プロフィールを書いた。
 そうして、待った。返信がくるまで。

 夜寝る前に返信があった。
 ドリンクを飲みながら、返信を見た。
 お誘いO.K.の返事だった。

 1時間後、その彼と出会う。
 彼の名前や会話の内容など入ってなかった。だけど、若い男性と遊べている実感が私を幸福感に包み込んだ。
 もちろん、やることはやってその日を終えて、朝お別れをしたワンナイトラブ。

30前後まで、若さを取り戻した私は、女としての自信を取り戻していた。

「あは、最高」
 私はマッチングアプリでその日も男漁りをした。
 その日は、2人の男を捕まえた。
「ワンナイト楽しい」
 最後の1本を飲む。
 明日には20歳前後の若さが戻ってくるはず。

 翌日、一番美しいと思える自分が鏡の中にいた。
 マッチングアプリではなく、今度は立ちんぼで相手を引っ掛けてやろうと思った。

 歌舞伎町の繁華街の脇で立ちんぼして、相手を待った。1人と交渉成立してホテルへと向かった。

 ハッスルしまくりだった。
「ああん。ああん」
 男をいかせる高揚感に私は浸った。
「あああああ」
 私は恍惚した表情を浮かべた。
「若いって素晴らしいわ」
 男と一緒に私は眠りに落ちた。

 翌日、目が覚めて私は、男の髪を撫でた。何故だか体が重い。そう感じた。
 男が目を覚ます。
 私の顔を見たとたん、男は悲鳴を上げ、急いでベッドから出て、服をかき集めて着て、部屋から出て行ってしまった。
 何事かと思ったが、鏡を見て納得した。
 私の姿が老婆に戻っていたのだ。

 ドリンクの効果は永遠ではなかった。
 考えてみれば当たり前のことだ。舞い上がり過ぎて失念していた。 
 私は、若返りドリンクを当てたデパートに失意の中、行った。
 が、既に福引きコーナーはなくなっていた。
 失意は大きかったが、短い間良い夢を見れたとも思っている私がいた。

終わり
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