プロローグ



月明かりが差し込む部屋で、一人の明るい茶髪の青年が埃を被った真紅のベロア生地の表紙を開く。

それは青年がまだ幼い頃に撮った写真が貼ってあるアルバムで、その彼の隣には太陽のような笑顔を浮かべてカメラのレンズにピースサインを向けているもう一人の少年の姿がある。

青年はその少年の笑顔を指先で慈しむように撫でると、唇を固く結ぶ。

「リュウ、何でお前は笑わなくなったんだよ…」

青年は胸に何かがつっかえる様な感覚を覚え、その息苦しさから涙を一筋流す。

そして青年はその少年、笑わなくなってしまったリュウを救う事を決心した。これはそんな二人の遠回りをしすぎた恋の話。


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