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「もう、帰ってしまうのかい?」
背後からかけられた優しくて少し眠たげな声に私はシャツのボタンを留める手を休めて振り返った。
「明日も早いから帰るよ。生徒会の方で服装指導がある」
「そう……」
水月の綺麗な青い目が静かに伏せられた。
月並みな言葉だけど明るい海を閉じ込めたような彼の眼球が、今は夜の海のような色に染まっていた。
彼と仲の良い一乗谷や彼に依存傾向のみられる東本あたりが見たら「水月にそんな顔をさせるなんて君は鬼か!」目を釣り上げて怒るだろうと考える。
ITに精通した東本がそこらへんのカメラをハックしたり様々なところに信頼されている一乗谷がこの現場を”見て”いる可能性もゼロじゃないと思い至って思わず身震いした。
「どうかした?……寒い?」
「いや、武者震いだ」
「寒いならベッドにおいでって言おうと思ったのだけれど…」
そういってペラリと真っ白のシーツをめくってみせる。
何も身につけていない水月の身体がきわどいところまで露わになって私は思わず眉をひそめた。
「どう?」
「どう、じゃない。はしたないぞ」
「はしたなくても、君が戻ってきてくれるなら構わないのだけどね」
「不倫に慣れてるオンナの言葉のようだぞ、それは」
水月は再びシーツを下ろしてくすくすと笑った。
「女性は君の方だろう、さっきだってあんなに」
「よく言うな、他の男のキスマークをあれだけ見せつけておいてか」
水月が綺麗な口からとんでもない言葉を発しそうになるのを食い気味に止めた。
最中にちらちらと視界に入ってきた水月の体の赤い跡を思い出して気分が悪くなったのも事実だ。
「誰のものかと聞いてくれるかと思って」
「……誰のだ?」
「誰だと、思う?」
「……付き合ってられないな」
水月の笑顔に彼の策士具合を感じて、私はさっさと背を向け、ボタンを留めて制服のスカートのファスナーをあげた。
あの赤い跡は誰のものだろう。
そういうのを好みそうなのは、誰だろう。
気にしないそぶりを見せたけれどやはり気になるものは気になるのだ。
一乗谷は潔癖なところがあるから、きっと違う。
あの地理教師だろうか。あの人なら笑ってつけるかもしれない。
東本は水月に随分依存しているし、彼も甘んじて受け入れるだろう。
麻布に対して水月は興味を持っていたし、そういうことになったのだろうか。
水泳部の部長だろうか、あの人はそういうの好きそうだ。
歌唱部の金髪の彼、独占欲が強そうだからありえるかもしれない。
あるいはあの眼鏡の美人、優秀な人はなんでもできるのだろうか。
もしくはあのオレンジの髪の…
「名前?どうかした?」
「……いや、何も」
ズルズルキスマークの主について考えた末、水月の笑みを見て嵌められたのだと気付いた。
細められた青い目は気遣うそぶりを見せながらも彼の望み通り色々詮索した私を見て楽しんでいるのだろう。
そもそも私が邪推した面々のうち誰が水月と関係を持っているのか私は一つも知らない。
誰とも関係を結んでいないのかもしれないし、私が挙げた以外の人とも関係を持っているのかもしれない。
「鷲帆先生ではないよ」
「安心した。臼杵先生だったら私は事務室に先生の解雇を検討するよう進言するところだった」
「生徒会の方は、おそろしいね」
「まず第一に教師の名前を挙げたところが私にはおそろしいのだが」
そうやって彼は私の所属を猫のように目を細めて揶揄った。
そもそも水月はキスマークの主が臼杵先生でないと言っただけで彼と関係を結んでいないかまでは明言していないのだからおそろしい。
「帰る。君も、明日遅刻するなよ。制服も明日くらいはきちんと着るよう君のとこの、五月女にも言っておいてくれ」
ハイソックスを適当に履いて水月を振り返ると、彼はベッドサイドに手を伸ばして待って、と声をかけた。
「携帯、忘れているよ」
「……ああ」
ベッドに近寄り、上半身をさらけ出した水月からスマホを受け取る。
私が電源を入れてLINEやメールをチェックするのを彼はベッドサイドに手をついたまま見ていた。
「一乗谷に、何か言ったのか」
「どうして?」
「連絡が、」
水月といるのか、とだけメッセージが来ていた。時間は3時間前、当然気づかなかった。
「そうだね、名前と会うとは言ったかな」
「どうせ、色々含ませたんだろう」
「それは、どうかな」
水月も自分のスマホを手繰り寄せた。
私と違ってメールも着信も、内容を確認しないままに再びベッドサイドに戻す。
「確認しなくていいのか」
「来てるか確認しただけだから」
水を湛えたような青い瞳が静かに揺れた。
「本当に、帰ってしまうのかい」
また猫のように目を細めて水月が誘う。
どうせ本心では帰って欲しくないなんて思っていない。この男の腹の底にあるのは、
「……私に、生徒会に取り入って第9学区の情報を得たいのなら、やめておいたほうがいい。」
水月の青い目が見開かれて再び伏せられる。
「……知ってたんだ」
「バレてないとでも思っていたのか、君は」
春先から彼と臼杵先生がこそこそ嗅ぎ回っているのは知っていたし、臼杵先生に関しては長野先生が口を出すほど大々的に調べていた。むしろ生徒会にバレてないと思っていたことの方が不思議なくらいだ。
しかし、ここまでやってきて、おそらくその調査に進展はないだろう。
教職員はもちろん多大な権力を持つ生徒会であっても第9学区への介入はほとんどできないのだから、いくらそういうのが得意な東本や水月や、行動力のある臼杵先生がいるとはいえ、苦戦するのも当然なのだ。
「残念だったな。どんなに私と寝ても第9学区の情報は何一つ得られなかっただろう。時間の無駄だったな」
「きみは、どうして」
水月の青い目が波だった。
「僕は本当に、君を好きなのに」
「やめてくれないか」
強く腕を掴まれて顔が痛みに歪んだ。
「第9学区を調べているのは事実だけど、君と夜を過ごしているのは、違う」
「水月、」
私はもう帰るぞ、という言葉を唇でふさがれて強い力でベッドに引きずり込まれる。
せっかくはいたスカートがめくれ上がってぐちゃぐちゃになった。
水月は私の下腹部に跨って腕を掴む。
痛い。小さくうめくと少しだけ力が弱くなった。
「本当に、君のことが好きなんだ」
好きと言う割に水月はその顔に憂いをたたえて震える声で言った。
「今夜だけは、帰らないって、言ってくれるかい」
押し当てられた唇が冷たく震えていて、その途端私は抵抗の意思を捨て去った。
「本当に、君はずるい人だな」
水月はその言葉に静かに冷たい唇を緩ませた。すべて、彼がする私の情を誘う行動は計算尽くなのだ。私が落ちるのをわかっていての行動なのだ。さらに言うなら、それを知っていても、東本だか一乗谷だかがハッキングしてるであろうパソコンのカメラと目があっても、私はそれに抗えない。
「桂士のことが気になる?」
水月はちらりとパソコンに目をやった。……東本だったか。
「いや、東本が気にしてるのは君だろう」
それはどうだろうね、と水月が私の首筋を撫でた。
呆れたようにカメラのレンズがぐるりと回ったのを最後に私はカメラの存在を無視することに決めて、目の前の彼だけに集中した。
水月の綺麗な青い目は、もう波立っていない。私ばっかりが彼を好きで利用されて、本当に馬鹿みたいだ。
背後からかけられた優しくて少し眠たげな声に私はシャツのボタンを留める手を休めて振り返った。
「明日も早いから帰るよ。生徒会の方で服装指導がある」
「そう……」
水月の綺麗な青い目が静かに伏せられた。
月並みな言葉だけど明るい海を閉じ込めたような彼の眼球が、今は夜の海のような色に染まっていた。
彼と仲の良い一乗谷や彼に依存傾向のみられる東本あたりが見たら「水月にそんな顔をさせるなんて君は鬼か!」目を釣り上げて怒るだろうと考える。
ITに精通した東本がそこらへんのカメラをハックしたり様々なところに信頼されている一乗谷がこの現場を”見て”いる可能性もゼロじゃないと思い至って思わず身震いした。
「どうかした?……寒い?」
「いや、武者震いだ」
「寒いならベッドにおいでって言おうと思ったのだけれど…」
そういってペラリと真っ白のシーツをめくってみせる。
何も身につけていない水月の身体がきわどいところまで露わになって私は思わず眉をひそめた。
「どう?」
「どう、じゃない。はしたないぞ」
「はしたなくても、君が戻ってきてくれるなら構わないのだけどね」
「不倫に慣れてるオンナの言葉のようだぞ、それは」
水月は再びシーツを下ろしてくすくすと笑った。
「女性は君の方だろう、さっきだってあんなに」
「よく言うな、他の男のキスマークをあれだけ見せつけておいてか」
水月が綺麗な口からとんでもない言葉を発しそうになるのを食い気味に止めた。
最中にちらちらと視界に入ってきた水月の体の赤い跡を思い出して気分が悪くなったのも事実だ。
「誰のものかと聞いてくれるかと思って」
「……誰のだ?」
「誰だと、思う?」
「……付き合ってられないな」
水月の笑顔に彼の策士具合を感じて、私はさっさと背を向け、ボタンを留めて制服のスカートのファスナーをあげた。
あの赤い跡は誰のものだろう。
そういうのを好みそうなのは、誰だろう。
気にしないそぶりを見せたけれどやはり気になるものは気になるのだ。
一乗谷は潔癖なところがあるから、きっと違う。
あの地理教師だろうか。あの人なら笑ってつけるかもしれない。
東本は水月に随分依存しているし、彼も甘んじて受け入れるだろう。
麻布に対して水月は興味を持っていたし、そういうことになったのだろうか。
水泳部の部長だろうか、あの人はそういうの好きそうだ。
歌唱部の金髪の彼、独占欲が強そうだからありえるかもしれない。
あるいはあの眼鏡の美人、優秀な人はなんでもできるのだろうか。
もしくはあのオレンジの髪の…
「名前?どうかした?」
「……いや、何も」
ズルズルキスマークの主について考えた末、水月の笑みを見て嵌められたのだと気付いた。
細められた青い目は気遣うそぶりを見せながらも彼の望み通り色々詮索した私を見て楽しんでいるのだろう。
そもそも私が邪推した面々のうち誰が水月と関係を持っているのか私は一つも知らない。
誰とも関係を結んでいないのかもしれないし、私が挙げた以外の人とも関係を持っているのかもしれない。
「鷲帆先生ではないよ」
「安心した。臼杵先生だったら私は事務室に先生の解雇を検討するよう進言するところだった」
「生徒会の方は、おそろしいね」
「まず第一に教師の名前を挙げたところが私にはおそろしいのだが」
そうやって彼は私の所属を猫のように目を細めて揶揄った。
そもそも水月はキスマークの主が臼杵先生でないと言っただけで彼と関係を結んでいないかまでは明言していないのだからおそろしい。
「帰る。君も、明日遅刻するなよ。制服も明日くらいはきちんと着るよう君のとこの、五月女にも言っておいてくれ」
ハイソックスを適当に履いて水月を振り返ると、彼はベッドサイドに手を伸ばして待って、と声をかけた。
「携帯、忘れているよ」
「……ああ」
ベッドに近寄り、上半身をさらけ出した水月からスマホを受け取る。
私が電源を入れてLINEやメールをチェックするのを彼はベッドサイドに手をついたまま見ていた。
「一乗谷に、何か言ったのか」
「どうして?」
「連絡が、」
水月といるのか、とだけメッセージが来ていた。時間は3時間前、当然気づかなかった。
「そうだね、名前と会うとは言ったかな」
「どうせ、色々含ませたんだろう」
「それは、どうかな」
水月も自分のスマホを手繰り寄せた。
私と違ってメールも着信も、内容を確認しないままに再びベッドサイドに戻す。
「確認しなくていいのか」
「来てるか確認しただけだから」
水を湛えたような青い瞳が静かに揺れた。
「本当に、帰ってしまうのかい」
また猫のように目を細めて水月が誘う。
どうせ本心では帰って欲しくないなんて思っていない。この男の腹の底にあるのは、
「……私に、生徒会に取り入って第9学区の情報を得たいのなら、やめておいたほうがいい。」
水月の青い目が見開かれて再び伏せられる。
「……知ってたんだ」
「バレてないとでも思っていたのか、君は」
春先から彼と臼杵先生がこそこそ嗅ぎ回っているのは知っていたし、臼杵先生に関しては長野先生が口を出すほど大々的に調べていた。むしろ生徒会にバレてないと思っていたことの方が不思議なくらいだ。
しかし、ここまでやってきて、おそらくその調査に進展はないだろう。
教職員はもちろん多大な権力を持つ生徒会であっても第9学区への介入はほとんどできないのだから、いくらそういうのが得意な東本や水月や、行動力のある臼杵先生がいるとはいえ、苦戦するのも当然なのだ。
「残念だったな。どんなに私と寝ても第9学区の情報は何一つ得られなかっただろう。時間の無駄だったな」
「きみは、どうして」
水月の青い目が波だった。
「僕は本当に、君を好きなのに」
「やめてくれないか」
強く腕を掴まれて顔が痛みに歪んだ。
「第9学区を調べているのは事実だけど、君と夜を過ごしているのは、違う」
「水月、」
私はもう帰るぞ、という言葉を唇でふさがれて強い力でベッドに引きずり込まれる。
せっかくはいたスカートがめくれ上がってぐちゃぐちゃになった。
水月は私の下腹部に跨って腕を掴む。
痛い。小さくうめくと少しだけ力が弱くなった。
「本当に、君のことが好きなんだ」
好きと言う割に水月はその顔に憂いをたたえて震える声で言った。
「今夜だけは、帰らないって、言ってくれるかい」
押し当てられた唇が冷たく震えていて、その途端私は抵抗の意思を捨て去った。
「本当に、君はずるい人だな」
水月はその言葉に静かに冷たい唇を緩ませた。すべて、彼がする私の情を誘う行動は計算尽くなのだ。私が落ちるのをわかっていての行動なのだ。さらに言うなら、それを知っていても、東本だか一乗谷だかがハッキングしてるであろうパソコンのカメラと目があっても、私はそれに抗えない。
「桂士のことが気になる?」
水月はちらりとパソコンに目をやった。……東本だったか。
「いや、東本が気にしてるのは君だろう」
それはどうだろうね、と水月が私の首筋を撫でた。
呆れたようにカメラのレンズがぐるりと回ったのを最後に私はカメラの存在を無視することに決めて、目の前の彼だけに集中した。
水月の綺麗な青い目は、もう波立っていない。私ばっかりが彼を好きで利用されて、本当に馬鹿みたいだ。
