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暑くて一歩も動きたくない夏休み。宿題は未だ終わらず、でもこんな状態で勉強なんてできたもんじゃないからもう少し涼しくなったら本気出すって決めている。
わたしが今涼を求めて潰れているのは自宅ではなく勝手知ったる幼馴染の部屋。高校生になった同い年の異性の幼馴染の部屋で無防備に寛ぐ、なんてドキドキしちゃう展開がいかにもありそうだけど私たちの間に限ってそれはない。わたしたちはプールはおろか5歳くらいまでは素っ裸で一緒に風呂に入っていたような仲だから今更だろう。幼馴染は早熟だったので、小学校に入る頃には今のような感じだったけど。
「おい、はしたないぞ」
仰向けの視界に不機嫌そうな幼馴染の顔。
「颯馬ぁ、アイスは?」
「勉強が終わってからだ!」
颯馬は麦茶の乗ったお盆を置いて、ぴしゃりと言い放ち、机に広げたテキストに再び取り掛かった。
ちらっと見たら夏休みの課題はとっくに終わらせたらしく、今やっているのは成績上位クラスで人気の参考書だった。うちの学校は自主性を重視してるから、成績がよほど悪くなければ大量に宿題が出ることはなくて真面目な颯馬が終わらせてるのは当然かもしれない。それでも勉強するんだから真面目だよなあ。
「ねー颯馬ぁ」
「僕が勉強をしているのが見えないのか?」
ずりずりと這いずって正座している颯馬の膝に乗り上げた。メガネ越しの眼光がぎらりと光ったけど、足を開いてわたしの頭を落とすようなことはなかった。でもそれは颯馬の優しさの所為じゃなくて、颯馬がびっくりするくらい運動オンチで人の頭が乗った膝を素早く開閉できないからだ。
「ねーアイス食べたい」
「勉強が終わってからだ!」
「でもさあ夏休みの宿題終わってるんでしょ。これ以上なにの勉強をするのさ」
いくらスライブセントラルが国内屈指の学園都市とはいえ、第七学区の天翔学園では進学でも日々の学校生活でも部活動ポイントがものをいう。仮に勉強がめちゃめちゃできなくても、部活動ポイントの高い部活に属し貢献していれば関係なく進学で有利になるし日々の学校生活は豊かになる。
「歌唱部は部活動ランキングでの結果は、まだまだだからな。勉強をしていかないと競合の部活と比べて補えない部分もある。それに僕は元々勉強が嫌いじゃない」
「はあー颯馬はほんとに真面目だなー」
「名前が不真面目すぎるんだ。あの燎さえ歌唱部の合宿前に課題は全て終えていたぞ」
「げっ!っていうか五月女先輩面倒くさがりだけど頭悪くないでしょ」
歌唱部に入る前の颯馬は"出来すぎて"クラスでも浮いてた。運動はポンコツだけどそれは目が悪かったり燃費が異様に悪かったりという元々の体の問題も同時に持ち合わせているから本人もあんまり気にしていなかったし、その代わりに勉強がめちゃめちゃできた。議論も得意だった。顔もいいし性格も悪くないけどまあ言い方がちょっときつかったり誰にでもにこにこするようなタイプじゃなかったりして、遠巻きにされてたんだ。(昔は美少女だったからちょっと照れて微笑むだけで天使!って言われてたんだよ。なんでか育った今はいつもしかめっ面だけど)
歌唱部に勧誘されて3年の鑑香先輩が可愛がってくれるようになってからは前と違う方向でちょっと柔らかくなった気がする。鑑香先輩はカリスマっぽくて颯馬の頭の良さを見出して会計に命じたりビジネスにも理解があるから颯馬の経済の難しい話にも付き合ってくれるし颯馬も慕ってるしで色々と(色々ってなんだ?)教えてくれてるらしい。
転校生の光司くんとは名前で呼び合う仲だし(初めて聞いた時びっくりしすぎて、最近颯馬がよく言うひなたって彼女?って聞いたら怒られたし光司くんは顔を真っ赤にしてた)、ヤンキーの五月女先輩とはギャーギャー喧嘩しながらも一緒にパンダの着ぐるみをかぶるような仲だし、最近は不登校気味だとかいうハルモト先輩を光司くんと一緒に追いかけ回してるらしい。
去年までの颯馬からは考えられないくらい、颯馬は普通の高校生みたいになった。寂しくはないし、むしろよかったって思う。頭がよくて話が合う人がいないのはかわいそうだった。わたしは颯馬の難しい話についてけるほど頭がよくなくかったし、喧嘩しても幼馴染だから中々颯馬が謝らなくたってしょうがないなですませちゃうし、結局女の幼馴染は颯馬が本当は欲しがってただろう普通の友達になれなかったから。
「でも宿題終わらなくても颯馬が面倒見てくれるもんね」
「最終日に泣きついても僕は面倒見ないからな」
「そ、そしたら鑑香先輩に電話する。鑑香先輩困ったことがあったらすぐに言うんだよって言ってくれたもん……」
「くだらないことで水月先輩に迷惑をかけるな……」
颯馬はため息をついて寝そべったままのわたしを引きずりおこした。わたしは颯馬みたいに鈍臭くないからおでこを机にぶつけることはなかった。
「とりあえず古典のワークを終わらせろ。そしたらアイスを買いに連れってやるから」
「ほんと?あとわたし海にも行きたいな」
「僕は泳げないぞ」
「今更言わなくても颯馬がカナヅチなのはしってますけど?」
「1人で海水浴に行きたいならそう言え。僕は行かないからな」
「えーっ泳がなくてもいいから一緒に行こうよーっ!合宿では泳がなくても丸目先輩と楽しくビーチで砂遊びしたんでしょ!?」
「とりあえず宿題を終わらせてから言え!」
すごすごと颯馬の正面に着席し古典のテキストを開く。えっと助動詞のましは動詞の未然形に接続するから………
しばらく解き続けると視線を感じた。颯馬と眼鏡越しに目が合い、今更ドキッともせず声をかける。
「何?」
「お前は、黙っていればこんなに……」
……と思ったけど颯馬は違ったらしい。長い睫毛をぱっと伏せて、夏なのに真っ白い肌を赤く染めた。口だけは不満げに歪んでいる。
「な、なに、」
柄にもなく動揺してわたしまで顔が熱い。
なんだなんだ。おかしい、クーラーガンガン効いてるはずなのに。
「……なんでもない」
颯馬が勢いよく麦茶を飲み干してからのコップを置き、汗をぬぐった。
長い睫毛、つたう汗、いつもより多めにボタンを開けてるシャツから覗く白い喉が、ずっと変わらないはずの幼馴染のもののはずなのに眩しかった。
わたしが今涼を求めて潰れているのは自宅ではなく勝手知ったる幼馴染の部屋。高校生になった同い年の異性の幼馴染の部屋で無防備に寛ぐ、なんてドキドキしちゃう展開がいかにもありそうだけど私たちの間に限ってそれはない。わたしたちはプールはおろか5歳くらいまでは素っ裸で一緒に風呂に入っていたような仲だから今更だろう。幼馴染は早熟だったので、小学校に入る頃には今のような感じだったけど。
「おい、はしたないぞ」
仰向けの視界に不機嫌そうな幼馴染の顔。
「颯馬ぁ、アイスは?」
「勉強が終わってからだ!」
颯馬は麦茶の乗ったお盆を置いて、ぴしゃりと言い放ち、机に広げたテキストに再び取り掛かった。
ちらっと見たら夏休みの課題はとっくに終わらせたらしく、今やっているのは成績上位クラスで人気の参考書だった。うちの学校は自主性を重視してるから、成績がよほど悪くなければ大量に宿題が出ることはなくて真面目な颯馬が終わらせてるのは当然かもしれない。それでも勉強するんだから真面目だよなあ。
「ねー颯馬ぁ」
「僕が勉強をしているのが見えないのか?」
ずりずりと這いずって正座している颯馬の膝に乗り上げた。メガネ越しの眼光がぎらりと光ったけど、足を開いてわたしの頭を落とすようなことはなかった。でもそれは颯馬の優しさの所為じゃなくて、颯馬がびっくりするくらい運動オンチで人の頭が乗った膝を素早く開閉できないからだ。
「ねーアイス食べたい」
「勉強が終わってからだ!」
「でもさあ夏休みの宿題終わってるんでしょ。これ以上なにの勉強をするのさ」
いくらスライブセントラルが国内屈指の学園都市とはいえ、第七学区の天翔学園では進学でも日々の学校生活でも部活動ポイントがものをいう。仮に勉強がめちゃめちゃできなくても、部活動ポイントの高い部活に属し貢献していれば関係なく進学で有利になるし日々の学校生活は豊かになる。
「歌唱部は部活動ランキングでの結果は、まだまだだからな。勉強をしていかないと競合の部活と比べて補えない部分もある。それに僕は元々勉強が嫌いじゃない」
「はあー颯馬はほんとに真面目だなー」
「名前が不真面目すぎるんだ。あの燎さえ歌唱部の合宿前に課題は全て終えていたぞ」
「げっ!っていうか五月女先輩面倒くさがりだけど頭悪くないでしょ」
歌唱部に入る前の颯馬は"出来すぎて"クラスでも浮いてた。運動はポンコツだけどそれは目が悪かったり燃費が異様に悪かったりという元々の体の問題も同時に持ち合わせているから本人もあんまり気にしていなかったし、その代わりに勉強がめちゃめちゃできた。議論も得意だった。顔もいいし性格も悪くないけどまあ言い方がちょっときつかったり誰にでもにこにこするようなタイプじゃなかったりして、遠巻きにされてたんだ。(昔は美少女だったからちょっと照れて微笑むだけで天使!って言われてたんだよ。なんでか育った今はいつもしかめっ面だけど)
歌唱部に勧誘されて3年の鑑香先輩が可愛がってくれるようになってからは前と違う方向でちょっと柔らかくなった気がする。鑑香先輩はカリスマっぽくて颯馬の頭の良さを見出して会計に命じたりビジネスにも理解があるから颯馬の経済の難しい話にも付き合ってくれるし颯馬も慕ってるしで色々と(色々ってなんだ?)教えてくれてるらしい。
転校生の光司くんとは名前で呼び合う仲だし(初めて聞いた時びっくりしすぎて、最近颯馬がよく言うひなたって彼女?って聞いたら怒られたし光司くんは顔を真っ赤にしてた)、ヤンキーの五月女先輩とはギャーギャー喧嘩しながらも一緒にパンダの着ぐるみをかぶるような仲だし、最近は不登校気味だとかいうハルモト先輩を光司くんと一緒に追いかけ回してるらしい。
去年までの颯馬からは考えられないくらい、颯馬は普通の高校生みたいになった。寂しくはないし、むしろよかったって思う。頭がよくて話が合う人がいないのはかわいそうだった。わたしは颯馬の難しい話についてけるほど頭がよくなくかったし、喧嘩しても幼馴染だから中々颯馬が謝らなくたってしょうがないなですませちゃうし、結局女の幼馴染は颯馬が本当は欲しがってただろう普通の友達になれなかったから。
「でも宿題終わらなくても颯馬が面倒見てくれるもんね」
「最終日に泣きついても僕は面倒見ないからな」
「そ、そしたら鑑香先輩に電話する。鑑香先輩困ったことがあったらすぐに言うんだよって言ってくれたもん……」
「くだらないことで水月先輩に迷惑をかけるな……」
颯馬はため息をついて寝そべったままのわたしを引きずりおこした。わたしは颯馬みたいに鈍臭くないからおでこを机にぶつけることはなかった。
「とりあえず古典のワークを終わらせろ。そしたらアイスを買いに連れってやるから」
「ほんと?あとわたし海にも行きたいな」
「僕は泳げないぞ」
「今更言わなくても颯馬がカナヅチなのはしってますけど?」
「1人で海水浴に行きたいならそう言え。僕は行かないからな」
「えーっ泳がなくてもいいから一緒に行こうよーっ!合宿では泳がなくても丸目先輩と楽しくビーチで砂遊びしたんでしょ!?」
「とりあえず宿題を終わらせてから言え!」
すごすごと颯馬の正面に着席し古典のテキストを開く。えっと助動詞のましは動詞の未然形に接続するから………
しばらく解き続けると視線を感じた。颯馬と眼鏡越しに目が合い、今更ドキッともせず声をかける。
「何?」
「お前は、黙っていればこんなに……」
……と思ったけど颯馬は違ったらしい。長い睫毛をぱっと伏せて、夏なのに真っ白い肌を赤く染めた。口だけは不満げに歪んでいる。
「な、なに、」
柄にもなく動揺してわたしまで顔が熱い。
なんだなんだ。おかしい、クーラーガンガン効いてるはずなのに。
「……なんでもない」
颯馬が勢いよく麦茶を飲み干してからのコップを置き、汗をぬぐった。
長い睫毛、つたう汗、いつもより多めにボタンを開けてるシャツから覗く白い喉が、ずっと変わらないはずの幼馴染のもののはずなのに眩しかった。
