RE:VALE
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百くんは、元気な人だ。芸能界という昼も夜もないような世界でモリモリ働いて、いつも元気でニコニコしてて大きな声で笑っている。「カラダ張る仕事はユキの分まで」と豪語しているが本当にそれを実行してしまうのが百くんのすごいところ。昨年末に開催されたブラホワの後もそれは変わらず、それどころかますます頑張っている。そんな百くんも今日は千さんの新曲制作難航に伴うリスケジュールで半日お休み。いつも元気いっぱい、膨れ饅頭大暴れの勢いの百くんもどうやらお疲れのようで……
「あ〜なんだかモモちゃん疲れちゃったな〜」
と口にしながらソファの前を行ったり来たり。何度もちらっちらっとこちらを思わせぶりに見るので、私はスマホから目を離した。あざとく口を尖らせていて、演技と分かっていてもすごくかわいい。
「疲れちゃったの?ちょっと座ったら」
「あ〜温泉とか行きたいよ〜!!ね、温泉旅館行きたくない!?」
「そんな暇あるの?」
「……」
私の口から思いの外冷静な責める様な声が出たので、百くんが表情をなくして沈黙した。別に責めたかったわけではなく、本当に忙しいのを、今後に控えるビッグイベントを知っていた。すでにレインボーアリーナの柿落としを昨年末ブラホワで争った4グループがやることは発表されていて、連日世間を騒がせていた。
「ごめん、その……レインボーアリーナの柿落としまでは本当に忙しいでしょ」
「はい……」
恐る恐る百くんを見るとしょんぼりした様子だったけど、あの暗い雰囲気はなくて私はほっとした。ゼロアリーナ柿落としの時は、本当に死んじゃいそうだった。「なんでもないよ」「ちょっと忙しいだけ」「歌えないオレは価値がないのに」「ごめん……しばらく連絡できない」どんどん追い詰められて、暗い表情で私を突き放した、あの日の顔を忘れられない。百くんは千さんとイチャイチャ夫婦漫才して、言いたいこと言い合って喧嘩してるくらいでちょうどいいのだ。Re:valeの問題はちゃんと喧嘩して2人の間で対等に話し合って解決して、末長く仲良しでいてほしい。私の願いはそれだけ。
「心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」
百くんはまたその言葉を繰り返す。ゼロアリーナの柿落としが終わってから幾度となく百くんはこの言葉を口にした。どうしてあんなに苦しんでいたのかは教えてくれないままだけど、しっかりと私の目を見て繰り返す。百くんが言わないなら、無理やりそれを聞き出そうとは思わない。
「今回のライブは今まで頑張ってきた、アイドルみんなのご褒美なんだよ。でもさ、プライベートでもご褒美欲しいな〜って思うわけですよ!!モモちゃんすっごく頑張ったから!」
先ほどの真剣なトーンと打って変わって、明るい口調で百くんが演説する。ジリジリと近づいてきて、ふざけた話し方と裏腹に視線は獲物を狙うように鋭い。笑いを堪えて大真面目に聞き返す。
「それが温泉ですか?」
「そ!昔は健康ランドがご褒美だったけど、ちょっと難しいしな〜」
「ちょっとどころじゃないよ、大騒ぎになるよ」
「あ〜〜〜癒しが足りないよ!!」
絶対王者がお忍びで健康ランド。数年前ならともかく、今の人気っぷりからして間違いなく“オカリン”が許してくれないだろう。卒倒しそう。かといって日帰りで行けるような温泉地じゃ1日の大半が移動時間になってしまう。それじゃ百くんは休まらないだろうな。
「……だから、ちょ〜っとお膝をちょっと借してもらうだけでいいんだけど」
「あ〜ね……」
百くんはジリジリと迫り、私はここまでの過剰なお芝居がここに着地するためのものだったと理解した。ソワソワと行ったり来たり、くるくる変わる表情、本当に見ていて飽きない。
「いいよ、どうぞ」
「やった!まじで!!」
猫目でジリジリ迫っていた百くんは私がぽんとソファを叩くとぱあっと表情を明るくさせた。運動神経に優れた百くんにしては珍しくよっこいしょなんて言ってソファに腰を下ろして、そのままゴロンと転がった。「最高!楽園ですな〜」なんて言ってニコニコしている。大口あけて笑うから大きい八重歯が丸見えだ。こんなので大喜びして、安上がりな人。
私は何してたらいいんだ。スマホはテーブルに置いてしまったから立ち上がらないと届かないし、立ち上がれば百くんの頭が落っこちてしまう。顔で伝わったのか百くんが「じゃあ手貸して」と囁いた。はい、と差し出した手を嬉しそうににぎにぎして「わ〜超よく寝れそう……」と百くんが笑う。可愛い、こういうふにゃっとした顔あんまり見たことないかも。百くんはお酒が入っても元気にテンション上がるタイプだし、仕事で飲んでて可愛い時は「営業モード」なんだって千さん言ってたし。
「……百くん?」
「ぐう」
嘘寝かと思ったら、本当に寝ている。この明るい部屋で?さっきまであんなに元気におしゃべりしてたのに?寝心地悪そうな膝の上で?……よっぽど疲れてたんだなあ。むにゃむにゃ言ってる寝顔もかわいいなんて、さすが百くん。
メッシュの入った頭を撫でて百くんの日頃の忙しさに想いを馳せる。朝から晩まで、朝も夜もなく、夢のために、ファンのために、相方のために、Re:valeのために走り回って。辛くても他人に見せずに、笑顔で振る舞う、芸能界一を名乗れるくらいの頑張り屋さん。ご褒美が欲しいなんて甘えてきたのは多分初めてで、それに応えてあげたい気持ちは十分にあった。温泉旅行は……半年後くらいを目標にまとまった休みを根回ししておかないと難しいかもだけど。百くんにご褒美。すぐにあげられそうなのは、膝枕の他に何があるかな。美味しいご飯とかしか思いつかない。
そのまま百くんは私の膝の上で爆睡して、2時間後にぱちっと目を覚ました。2時間ぶりにお目見えした百くんの綺麗な瞳に見惚れる間も無く、百くんは目をかっ開き(あのいつもの猫目だ)悲鳴を上げて「うそ!オレまじで寝ちゃった!?膝枕してもらっていい感じにイチャイチャしようと思ってたのに!わーんごめん!重かったでしょ!?ごめん!!!!今度はオレが膝枕しよっか!?!?硬いからいらない!?」って大暴れしたので思わず笑ってしまった。願望が漏れてるよ、百くん。今日もお疲れ様です。
