去る春、君の声だけが在る2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
>2年夏、試験前
期末試験1週間前、部活停止。真波は元気よく山へ駆けて行った。
自主練の名目で自由に走れるとあって、ご機嫌の様子で軽やかに愛車のペダルを回して去っていく。いいなあ、と見送ったところで、私の肩を叩く手。
観念して振り向くと、もちろん立っていたのは眼鏡を逆光で光らせたレイさんだった。
「わかってるな?」
「はーい……」
私はこの1週間机に齧り付いて勉強することが決まっている。レイさんは多分、逃がしてはくれないだろう。羨ましいよ、真波が……
私は勉強ができない。2年最初の試験で普通に赤点ギリギリを連発してレイさんにマジで叱られたレベル。
残念ながら、スポーツ特待生でもエースクライマーでもないので赤点取れば部活をさせてもらえなくなる。推薦で入ってきた部員も多いので、試験はいつもひとりで苦しんでいる。レイさんがいてくれて本当によかった……のだけど、素直に感謝するにはいささかスパルタ男。
仲良し同期の成績については、「ジョーノート」の作成者であるレイさんが成績優秀なのは言わずもがな。やる気のない真波は進級時期を乗り切ればいいだけなので論外、バシさんは自転車競技部で走ることに対しての執念がすごいので赤点出すような真似はしない。
……そう、つまりテストの度、なぜか「6割目標」の私がいちばん苦しんでいる!
1年の頃からレイさんがノート貸してくれるので大体どうにかなっていたが、2年で文理選択した途端に成績が転がり落ちた。
配布された成績表を見て「自分で決めておいて、なんだこのザマは!」とレイさんが悲鳴をあげた。特に何も考えずに決めたからだよ、と正直に言ったら本当に絶交されると思ったので黙っていたが、正直なところそういうことであった。学校は楽しいけど、部活が本気なので勉強どころではない。
そして「目標6割」ということは、頑張らないとそこに手が届かないということで。
2年最初の試験で赤点スレスレを叩き出した私にレイさんは呆れ、中間では過去2年分の過去問を並べ、「とりあえず全て覚えるように」と重々しく言い放った。
残念なことに教科担任は持ち上がりで、過去2年とは違う教師が問題を作るが、「同じ教科書を使っているのだから最重要ポイントは変わらない」とレイさんは言った。最重要問題を確実に抑えることで、最低限の点を取らせようという苦肉の策である。
しかし作戦はそううまくいかず。覚えた側からすっぽ抜けていき、試験まで記憶に留めておけなかったのが敗因。レースのエントリー表とかコースとか部員のタイムのことなら覚えておけるのに、おかしいな。多分、歴史も化学も漢文も興味がなさすぎた。
そんなこんなで中間試験の結果が返ってきて、私の答案を見たレイさんは「なぜ同じ授業を受け、同じノートを見ておきながら、こうなるんだ……どうしてオレの半分しか取れないんだ……」「大してやってない数学と英語で取れてるのは、オレの教え方の問題なのか……?」と寮で頭を抱えていたらしい。目標60点は遠い。余計な心労を増やして申し訳ないなとは思っている。
そして成績の低迷は先輩方にもバレた。「悠人の受験の面倒を見てたんじゃなかったのか」と呆れられたけど、あれは自分がその1年前に散々苦しんだからだ。内申ゼロからなんとか高校に受かった時の貯金でどうにかしていた……としか言いようがない。
先輩達に叱られてしょんぼりする私を見たバシさんは「去年の期末の問題欲しいんすけど。できたら、泉田さんのやつで……」とすかさず交渉に入った。バシさんは当然過去問をかき集めずとも試験をパスできる男だ。成績の悪いマネージャーとどうにか一緒にインターハイに行こうという、アツい心遣いである。インハイ内定選手にそこまでさせておいて、期末で赤点を取るわけにはいかない。それは私もわかっている。
泉田さんは3年の先輩に声をかけてくれて、黒田さんやら葦木場さんやら、金子さん篠崎さんまで……大勢に迷惑をかけながら私は全教科の過去問を入手した。くちゃくちゃの過去問を手に「憧れの先輩方からもらった過去問なら、少しくらい関心が持てるだろ」とバシさんが言った。関心を持つどころか、情けなくて泣きそうです。私はしおしおで返事して、選択問題の葦木場さんがつけた丸を勿体なく思いながら消しゴムで消す。来年の後輩のために私も過去問は取っておこうと思った。
私は男子寮の居住棟に入れないので、レイさんの勉強会は専ら校舎か図書館、寮の食堂で行われる。場所を変えることも大事だと、まだ日がある時間帯は教室で。夕食後は男子寮の食堂に移動する予定だ。
過去問を端から解いていって、これがいつまで記憶に留まるかと不毛なことを考える。大学受験までこの日々が続くなんて。
「高校受験がどうにかなったし大学受験もどうにかなるって」と楽観視する私に対し、「高校受験がどうにかなったからって、大学受験もそううまく行くはずがないだろ」と現実主義のレイさんが唸る。
とりあえず部活を辞めさせられなければいい……中学の頃と比べたらそういう考えに至るだけ成長したなと思ったけど、レイさんが般若の顔で見下ろしていたので黙った。
「手がかかる分、真波よりタチ悪ぃぞ」と黒田さんから叱られたこともあり、私は今回は心を入れ替えて勉強するつもりだったのだ。今回こそ!自由に飛び出していく真波を見て、その決意は儚くも崩れかけたのだが。
放課後の教室でレイさんの説教は続く。口を動かしながら、私の答案を採点していくのだから見事なものだ。
「大体2年になって進路も考え始める時期だろ。何か大学で勉強したいことはないのか?」
「大学行ってまで勉強なんてしたくないよ……」
「栄養は?お前去年熱心に調べてただろう。それかスポーツ科学か……あとは理学療法は勉強できる大学も多いはずだ」
「受かるとこならどこでもいい、受からなかったら専門探す」
「福富さんが『同じ大学に来ればまた一緒に通える』って言ってただろう。そういう目標だっていいんだ」
「……第1志望明早ってこと?絶対無理!」
「お前な……」
寿一くんの卒業式で号泣して「卒業しないで、もう1年一緒に通って」と無茶を言ったら「明早に来れば今度は2年一緒だ」といつもの真顔でマジレスされたのは記憶に新しい。あの時はそういうことじゃない!って泣いて、荒北さんに笑われて終わったけど。進路の話題は高校2年になって、やけに現実味を帯びて迫ってくる。明早か……
寿一くんの発言はともかく、この春卒業した先輩たちの進路の華々しいこと!私の知っている大学なんてその3つくらいしかないに等しいが、どれも私の学力では難しいだろう。
明早。さっきも言った通り普通に無理。
洋南。荒北さんは受験勉強に死ぬほど苦戦している風に見せておきながら、あっさり受かった。は、腹立つ〜!カッコ良すぎて腹立つ!あれはあの人にしかできない芸当。
筑士波。急な進路変更とあって東堂さんもそこそこ苦労したらしい。そういうところを見せない人なので噂でしかないが。そもそも科目数が多い。あれもこれもの勉強は私には絶対無理。
結論、いける大学なし。
「別にみんなみたいに大学行っても自転車乗りたいわけじゃないし……履歴書に大卒って書きたいだけだし……」
拗ねて日本史の教科書を投げ出すと、レイさんは呆れた様子で今日何度目かのため息をついた。
「別に自転車乗るためだけに進学するわけじゃない。将来のことをよく考えてだな」
「わかってるって!お父さんみたいなこと言わないで!……いざという時どんな進路でも取れるように勉強しろって言うんでしょ……わかってるって……」
「よくわかってるじゃないか」
「練習にサポートに勉強に、お忙しいレイさんの時間を奪って悪いとも思ってるよ……」
「お気遣いどうも」
レイさんは大して気にしたそぶりもなく採点した答案を差し出した。バツがついたところの再確認だ。レイさんは今年レギュラー入りは叶わなかったが、秋からの新体制ではかなり有力候補だ。もちろんインハイのサポーターとしても期待されていて忙しい身、なのに成績はトップクラス、部員にノートを貸し出す余裕すらある。その上自身の勉強の片手間、成績の悪いマネージャーの面倒を見てすらいる。すごすぎない?敏腕マネージャーを目指しているものの、レイさんの存在がデカすぎて、目標達成はまだまだ先のような気がしている。
「あまり卑屈になるなよ。今年のインターハイ、お前が不在では裏方が回っていかない。赤点取ってる場合じゃないんだ」
「はい……」
「わかってないな。お前のためと言いつつ、オレのためでもある。3日間オレを働き詰めにさせてくれるなよ」
驚いて顔を上げると、レイさんは頬杖ついて、不敵に笑っていた。高田城礼。箱根学園2年生、来期参謀候補。思わず息を呑む。
「わあ……レイさん、もしかしなくても、すっごくモテるでしょう……」
「お陰様でモテる気配すらない。うちのエースクライマーで存在が霞むどころか、当の本人には最近まで認知すらされていなかったからな」
「あちゃあ、藪蛇だったか……」
なんだか話が不穏な方向に舵を切ったので、私はおとなしくバツが多い答案用紙(捨てられる目前で救出された、黒田さんの名前が書いてあるくちゃくちゃの問題用紙)に視線を落とす。ステルスと称されるその性能も時には困りものだ。
「勉強する気になったなら、先に解説から行こうか」
あーあ、結局勉強するしかないのか……ま、とりあえず直近の目標はやっぱり、部活停止されない程度の成績だな。私の内心を読み取ったのか、レイさんのメガネがギラっと光って、私は慌ててシャーペンを手に取った。
期末試験1週間前、部活停止。真波は元気よく山へ駆けて行った。
自主練の名目で自由に走れるとあって、ご機嫌の様子で軽やかに愛車のペダルを回して去っていく。いいなあ、と見送ったところで、私の肩を叩く手。
観念して振り向くと、もちろん立っていたのは眼鏡を逆光で光らせたレイさんだった。
「わかってるな?」
「はーい……」
私はこの1週間机に齧り付いて勉強することが決まっている。レイさんは多分、逃がしてはくれないだろう。羨ましいよ、真波が……
私は勉強ができない。2年最初の試験で普通に赤点ギリギリを連発してレイさんにマジで叱られたレベル。
残念ながら、スポーツ特待生でもエースクライマーでもないので赤点取れば部活をさせてもらえなくなる。推薦で入ってきた部員も多いので、試験はいつもひとりで苦しんでいる。レイさんがいてくれて本当によかった……のだけど、素直に感謝するにはいささかスパルタ男。
仲良し同期の成績については、「ジョーノート」の作成者であるレイさんが成績優秀なのは言わずもがな。やる気のない真波は進級時期を乗り切ればいいだけなので論外、バシさんは自転車競技部で走ることに対しての執念がすごいので赤点出すような真似はしない。
……そう、つまりテストの度、なぜか「6割目標」の私がいちばん苦しんでいる!
1年の頃からレイさんがノート貸してくれるので大体どうにかなっていたが、2年で文理選択した途端に成績が転がり落ちた。
配布された成績表を見て「自分で決めておいて、なんだこのザマは!」とレイさんが悲鳴をあげた。特に何も考えずに決めたからだよ、と正直に言ったら本当に絶交されると思ったので黙っていたが、正直なところそういうことであった。学校は楽しいけど、部活が本気なので勉強どころではない。
そして「目標6割」ということは、頑張らないとそこに手が届かないということで。
2年最初の試験で赤点スレスレを叩き出した私にレイさんは呆れ、中間では過去2年分の過去問を並べ、「とりあえず全て覚えるように」と重々しく言い放った。
残念なことに教科担任は持ち上がりで、過去2年とは違う教師が問題を作るが、「同じ教科書を使っているのだから最重要ポイントは変わらない」とレイさんは言った。最重要問題を確実に抑えることで、最低限の点を取らせようという苦肉の策である。
しかし作戦はそううまくいかず。覚えた側からすっぽ抜けていき、試験まで記憶に留めておけなかったのが敗因。レースのエントリー表とかコースとか部員のタイムのことなら覚えておけるのに、おかしいな。多分、歴史も化学も漢文も興味がなさすぎた。
そんなこんなで中間試験の結果が返ってきて、私の答案を見たレイさんは「なぜ同じ授業を受け、同じノートを見ておきながら、こうなるんだ……どうしてオレの半分しか取れないんだ……」「大してやってない数学と英語で取れてるのは、オレの教え方の問題なのか……?」と寮で頭を抱えていたらしい。目標60点は遠い。余計な心労を増やして申し訳ないなとは思っている。
そして成績の低迷は先輩方にもバレた。「悠人の受験の面倒を見てたんじゃなかったのか」と呆れられたけど、あれは自分がその1年前に散々苦しんだからだ。内申ゼロからなんとか高校に受かった時の貯金でどうにかしていた……としか言いようがない。
先輩達に叱られてしょんぼりする私を見たバシさんは「去年の期末の問題欲しいんすけど。できたら、泉田さんのやつで……」とすかさず交渉に入った。バシさんは当然過去問をかき集めずとも試験をパスできる男だ。成績の悪いマネージャーとどうにか一緒にインターハイに行こうという、アツい心遣いである。インハイ内定選手にそこまでさせておいて、期末で赤点を取るわけにはいかない。それは私もわかっている。
泉田さんは3年の先輩に声をかけてくれて、黒田さんやら葦木場さんやら、金子さん篠崎さんまで……大勢に迷惑をかけながら私は全教科の過去問を入手した。くちゃくちゃの過去問を手に「憧れの先輩方からもらった過去問なら、少しくらい関心が持てるだろ」とバシさんが言った。関心を持つどころか、情けなくて泣きそうです。私はしおしおで返事して、選択問題の葦木場さんがつけた丸を勿体なく思いながら消しゴムで消す。来年の後輩のために私も過去問は取っておこうと思った。
私は男子寮の居住棟に入れないので、レイさんの勉強会は専ら校舎か図書館、寮の食堂で行われる。場所を変えることも大事だと、まだ日がある時間帯は教室で。夕食後は男子寮の食堂に移動する予定だ。
過去問を端から解いていって、これがいつまで記憶に留まるかと不毛なことを考える。大学受験までこの日々が続くなんて。
「高校受験がどうにかなったし大学受験もどうにかなるって」と楽観視する私に対し、「高校受験がどうにかなったからって、大学受験もそううまく行くはずがないだろ」と現実主義のレイさんが唸る。
とりあえず部活を辞めさせられなければいい……中学の頃と比べたらそういう考えに至るだけ成長したなと思ったけど、レイさんが般若の顔で見下ろしていたので黙った。
「手がかかる分、真波よりタチ悪ぃぞ」と黒田さんから叱られたこともあり、私は今回は心を入れ替えて勉強するつもりだったのだ。今回こそ!自由に飛び出していく真波を見て、その決意は儚くも崩れかけたのだが。
放課後の教室でレイさんの説教は続く。口を動かしながら、私の答案を採点していくのだから見事なものだ。
「大体2年になって進路も考え始める時期だろ。何か大学で勉強したいことはないのか?」
「大学行ってまで勉強なんてしたくないよ……」
「栄養は?お前去年熱心に調べてただろう。それかスポーツ科学か……あとは理学療法は勉強できる大学も多いはずだ」
「受かるとこならどこでもいい、受からなかったら専門探す」
「福富さんが『同じ大学に来ればまた一緒に通える』って言ってただろう。そういう目標だっていいんだ」
「……第1志望明早ってこと?絶対無理!」
「お前な……」
寿一くんの卒業式で号泣して「卒業しないで、もう1年一緒に通って」と無茶を言ったら「明早に来れば今度は2年一緒だ」といつもの真顔でマジレスされたのは記憶に新しい。あの時はそういうことじゃない!って泣いて、荒北さんに笑われて終わったけど。進路の話題は高校2年になって、やけに現実味を帯びて迫ってくる。明早か……
寿一くんの発言はともかく、この春卒業した先輩たちの進路の華々しいこと!私の知っている大学なんてその3つくらいしかないに等しいが、どれも私の学力では難しいだろう。
明早。さっきも言った通り普通に無理。
洋南。荒北さんは受験勉強に死ぬほど苦戦している風に見せておきながら、あっさり受かった。は、腹立つ〜!カッコ良すぎて腹立つ!あれはあの人にしかできない芸当。
筑士波。急な進路変更とあって東堂さんもそこそこ苦労したらしい。そういうところを見せない人なので噂でしかないが。そもそも科目数が多い。あれもこれもの勉強は私には絶対無理。
結論、いける大学なし。
「別にみんなみたいに大学行っても自転車乗りたいわけじゃないし……履歴書に大卒って書きたいだけだし……」
拗ねて日本史の教科書を投げ出すと、レイさんは呆れた様子で今日何度目かのため息をついた。
「別に自転車乗るためだけに進学するわけじゃない。将来のことをよく考えてだな」
「わかってるって!お父さんみたいなこと言わないで!……いざという時どんな進路でも取れるように勉強しろって言うんでしょ……わかってるって……」
「よくわかってるじゃないか」
「練習にサポートに勉強に、お忙しいレイさんの時間を奪って悪いとも思ってるよ……」
「お気遣いどうも」
レイさんは大して気にしたそぶりもなく採点した答案を差し出した。バツがついたところの再確認だ。レイさんは今年レギュラー入りは叶わなかったが、秋からの新体制ではかなり有力候補だ。もちろんインハイのサポーターとしても期待されていて忙しい身、なのに成績はトップクラス、部員にノートを貸し出す余裕すらある。その上自身の勉強の片手間、成績の悪いマネージャーの面倒を見てすらいる。すごすぎない?敏腕マネージャーを目指しているものの、レイさんの存在がデカすぎて、目標達成はまだまだ先のような気がしている。
「あまり卑屈になるなよ。今年のインターハイ、お前が不在では裏方が回っていかない。赤点取ってる場合じゃないんだ」
「はい……」
「わかってないな。お前のためと言いつつ、オレのためでもある。3日間オレを働き詰めにさせてくれるなよ」
驚いて顔を上げると、レイさんは頬杖ついて、不敵に笑っていた。高田城礼。箱根学園2年生、来期参謀候補。思わず息を呑む。
「わあ……レイさん、もしかしなくても、すっごくモテるでしょう……」
「お陰様でモテる気配すらない。うちのエースクライマーで存在が霞むどころか、当の本人には最近まで認知すらされていなかったからな」
「あちゃあ、藪蛇だったか……」
なんだか話が不穏な方向に舵を切ったので、私はおとなしくバツが多い答案用紙(捨てられる目前で救出された、黒田さんの名前が書いてあるくちゃくちゃの問題用紙)に視線を落とす。ステルスと称されるその性能も時には困りものだ。
「勉強する気になったなら、先に解説から行こうか」
あーあ、結局勉強するしかないのか……ま、とりあえず直近の目標はやっぱり、部活停止されない程度の成績だな。私の内心を読み取ったのか、レイさんのメガネがギラっと光って、私は慌ててシャーペンを手に取った。
