去る春、君の声だけが在る2
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道路状況も問題なく、無事スタート前に榛名ロープウェー前に設営された本部テントに到着。本日のコースおよそ100キロを先んじて車で移動した形だ。昨日と同じで湖に近い立地だが、山岳ラインからの距離は近いし、朝だというのに信じられないほど暑い。なんだかゴールぽくない立地だ。
他の運営補助員の生徒と挨拶すると、気が引き締まる。私は今日、神奈川代表箱根学園の一員としてここに来ているから。他校の選手も同じ気持ちなのが感じられた。今日は私の他に、山口岩国と上越東の部員がそれぞれひとりずつ。今大会史上最もロードレースの精神を宿した紳士、山際選手を有する山口岩国高校の1年生部員。上越東の3年生は自身もロードレース経験者だという貴重な女子マネージャー。ぜひ仲良くなりたいです。インターハイというのはこういう交流も醍醐味であって。今年は去年ほど社交活動する余裕がないけど、貴重な連絡先交換チャンスだ。
大会2日目の今日は最もコース距離が長く、過酷な日程となることだろう。今日は、予定通りなら悠人の初仕事がある。コース上待機だったらきっと気を揉んで仕方なかったから、今日本部待機 でよかった。
予定時間の通りに選手達は無事出走したらしい。黒田さんも。思わずため息をつく。初っ端悠人の暴れっぷりが学年チャットルームを賑わせているのを横目に本部業務に励む。持論だけど、何も知らない1年生がいちばん自由に走れる。悠人は1年生ながらメンバー入りする実力は勿論のこと、性格は生意気全開、相手に強気で迫って、煽って、押しまくるアグレッシブな走りが強み。優しく頼もしく勝負にアツい4番「新開」のイメージが定着している総北、それから去年の「新開くん」の存在が強く印象づいているだろう京伏は、その真逆とも言える悠人のスタイルに翻弄されるだろう。
本部テントは来客対応やら追走車からの通信(道路状況やトラブルが随時入ってくる)に追われ、あまり携帯を見ていられる時間はない。先頭が金精峠を越えてしばらく。そろそろかな、と思った時スプリントリザルトチャットが動いた。来た!
いきなり山道ばかりで電波だけが懸念だったが、問題なさそう。ただ、レース運びは問題ばかりのようだが……
「14番116番接触 煽られてる」
スプリントリザルトチャットの一報に、舌打ちしそうになった。ダメ、そういう下品な行いはハコガクの印象が悪くなる。私だけでなくチャットルームも大いに荒れた。
「ま た か よ」
「昨日ぶり二度目」
「京伏か 例年の感じすか?」
「例年てか昨年ね」
「昨年てか昨日ね」
「新開さん因縁の111でなく?」
「いやそれがリザーバーの方、ちょっと過激目に」
「さ い あ く」
「やはり116」
「黒田さんを汚した罪は重い」
「おのれ黒田さんで飽きたらず泉田さんまで」
流石に見かねて片手でチャットを打ち込む。
『大会規定に違反してそうなら本部通報お願いします』
「あ、今日本部苗字がいんのか」
「セクハラはスポーツマンシップの範囲内ですか?」
「こら」
「ヤベ」
「ま た か よ」
「揉まれました……フランク……」
「最悪」
「おいたわしや」
「しかも2回」
「2回!?」
「よりによって……左!」
「万死だろ」
「116めっちゃ叫んでますけど!これ大丈夫ですか!?」
「うちもみんな叫んでるでしょ 放送コードですか」
「にく!!筋肉だと」
「マジで体目当てかよ」
「勘弁してよー」
「すいません苗字さんさっきの忘れてください」
……なんて??信じ難いが情報を整理すると泉田さんが京伏の岸神に体を触られ、当の岸神が言うには「筋肉」目当てらしい。昨日の黒田さんと状況は同じ。ってかなんで2回も接触許してるわけ!?バシさんは何やってんの!?やっぱ116……岸神はヤバい、昨日のうちにちゃんと対処しておくんだった!大荒れチャットが爆速で流れていく。
その時通知が来て。確認するとレイさんから個人チャットだった。
「スタート前にリザーバーに注意するよう直接報告済み。当日エントリー変更で入ったこと含め全員把握している。心配するな」
レイさーん!榛名湖前、本部テントで私は頼れる男の名前を絶叫したくなった。レイさーーん!ありがとう!さすが!頼れる男!来期参謀!できる男!でも事前に防げたらもっとよかったなあ!?!?
安心も束の間、「だから自分の仕事に戻れ」の追加メッセージが冷静さを呼び戻す。そうだ、今日の私の仕事は。
だから審判車からの続報を受け取った時、動揺したけど驚きはしなかった。2日目スプリントで箱根学園は誰を出すのか。本当は、最初からわかっていたのだ。
他の運営補助員の生徒と挨拶すると、気が引き締まる。私は今日、神奈川代表箱根学園の一員としてここに来ているから。他校の選手も同じ気持ちなのが感じられた。今日は私の他に、山口岩国と上越東の部員がそれぞれひとりずつ。今大会史上最もロードレースの精神を宿した紳士、山際選手を有する山口岩国高校の1年生部員。上越東の3年生は自身もロードレース経験者だという貴重な女子マネージャー。ぜひ仲良くなりたいです。インターハイというのはこういう交流も醍醐味であって。今年は去年ほど社交活動する余裕がないけど、貴重な連絡先交換チャンスだ。
大会2日目の今日は最もコース距離が長く、過酷な日程となることだろう。今日は、予定通りなら悠人の初仕事がある。コース上待機だったらきっと気を揉んで仕方なかったから、今日
予定時間の通りに選手達は無事出走したらしい。黒田さんも。思わずため息をつく。初っ端悠人の暴れっぷりが学年チャットルームを賑わせているのを横目に本部業務に励む。持論だけど、何も知らない1年生がいちばん自由に走れる。悠人は1年生ながらメンバー入りする実力は勿論のこと、性格は生意気全開、相手に強気で迫って、煽って、押しまくるアグレッシブな走りが強み。優しく頼もしく勝負にアツい4番「新開」のイメージが定着している総北、それから去年の「新開くん」の存在が強く印象づいているだろう京伏は、その真逆とも言える悠人のスタイルに翻弄されるだろう。
本部テントは来客対応やら追走車からの通信(道路状況やトラブルが随時入ってくる)に追われ、あまり携帯を見ていられる時間はない。先頭が金精峠を越えてしばらく。そろそろかな、と思った時スプリントリザルトチャットが動いた。来た!
いきなり山道ばかりで電波だけが懸念だったが、問題なさそう。ただ、レース運びは問題ばかりのようだが……
「14番116番接触 煽られてる」
スプリントリザルトチャットの一報に、舌打ちしそうになった。ダメ、そういう下品な行いはハコガクの印象が悪くなる。私だけでなくチャットルームも大いに荒れた。
「ま た か よ」
「昨日ぶり二度目」
「京伏か 例年の感じすか?」
「例年てか昨年ね」
「昨年てか昨日ね」
「新開さん因縁の111でなく?」
「いやそれがリザーバーの方、ちょっと過激目に」
「さ い あ く」
「やはり116」
「黒田さんを汚した罪は重い」
「おのれ黒田さんで飽きたらず泉田さんまで」
流石に見かねて片手でチャットを打ち込む。
『大会規定に違反してそうなら本部通報お願いします』
「あ、今日本部苗字がいんのか」
「セクハラはスポーツマンシップの範囲内ですか?」
「こら」
「ヤベ」
「ま た か よ」
「揉まれました……フランク……」
「最悪」
「おいたわしや」
「しかも2回」
「2回!?」
「よりによって……左!」
「万死だろ」
「116めっちゃ叫んでますけど!これ大丈夫ですか!?」
「うちもみんな叫んでるでしょ 放送コードですか」
「にく!!筋肉だと」
「マジで体目当てかよ」
「勘弁してよー」
「すいません苗字さんさっきの忘れてください」
……なんて??信じ難いが情報を整理すると泉田さんが京伏の岸神に体を触られ、当の岸神が言うには「筋肉」目当てらしい。昨日の黒田さんと状況は同じ。ってかなんで2回も接触許してるわけ!?バシさんは何やってんの!?やっぱ116……岸神はヤバい、昨日のうちにちゃんと対処しておくんだった!大荒れチャットが爆速で流れていく。
その時通知が来て。確認するとレイさんから個人チャットだった。
「スタート前にリザーバーに注意するよう直接報告済み。当日エントリー変更で入ったこと含め全員把握している。心配するな」
レイさーん!榛名湖前、本部テントで私は頼れる男の名前を絶叫したくなった。レイさーーん!ありがとう!さすが!頼れる男!来期参謀!できる男!でも事前に防げたらもっとよかったなあ!?!?
安心も束の間、「だから自分の仕事に戻れ」の追加メッセージが冷静さを呼び戻す。そうだ、今日の私の仕事は。
だから審判車からの続報を受け取った時、動揺したけど驚きはしなかった。2日目スプリントで箱根学園は誰を出すのか。本当は、最初からわかっていたのだ。
