去る春、君の声だけが在る2
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ミーティング。黒田さんと泉田さんより、今日の反省と明日の計画について話があった。
それから各セクションの報告事項。大会本部テントに入ってた先輩が、そこで仕入れた他校の情報をいくつか報告。その中のひとつ、総北6番……鏑木一差が体調不良。それを聞いて、疲労の色すら見せずミーティングに参加していた真波がわずかに肩を震わせた。私は隣に座っていたからこそ、その動揺がはっきりと伝わった。ノールックで軽く背中を小突くと、詰めていた息を吐き出す気配。
「大丈夫」
「うん」
真波は静かに頷いたが、僅かに動揺が残っていた。ミーティング中じゃなければもっと、なにか言葉をかけたり話を聞いたりできるのに。それきり私たちはその後も続く報告に耳を傾ける。ミーティングはまだ途中だ。
総北もうちも、今年は1年生をひとりだけチームに入れている。去年は真波がそうで、一方総北は1年トリオだった。
きっと真波はよく知っているのだと思う。自分と走る5人が強くて頼もしくて、それで途方もなく遠くて、自分と隔絶している、その感覚を。
真波は、去年3年生だった先輩方から不思議チャンだの生意気ルーキーだの言われながらも可愛がられていた。それでいて「先輩たちと覚悟が違った」とその後悔を口にしたことがあった。それが、去年の秋。
だから真波も総北でひとりきりの1年生に何か思うところがあったのだろう。強くて頼もしい先輩達、全力でスプリントに挑んだあとの疲労、不安も体調不良もきっと言い出しづらかっただろうなというのは私でも想像できる。何やってんだよ、総北。鳴子章吉。お前がいながらこれかよ。自分のこと で精一杯だったっていうのかよ。私がいろんな気持ちで歯を食いしばると今度は真波が私の背中を小突いた。私も止めていた息を再開して。
「そこ、ちゃんと聞いているのか」
「すみません」
そしてしっかり泉田さんに怒られた。前に立つ先輩方からは私たちの姿がよく見えたのだろう、黒田さんもこっちを睨む。選手とあろうものがミーティング中にふざけてる風に見えたのかも。真波は素直に謝って、座り直した。わかりやすく少し距離を空けて。真波が囁く。
「大丈夫だよ」
「うん」
大丈夫には何が含まれているのだろう。心配するな、悠人のことはオレらも気にしてるから、去年と同じ轍を踏まないから。
真波は2年生になったし、悠人は好調だ。疲労こそあれ、それは初日を走りきった全員に言えること。だから、大丈夫。私は気を取り直して戦況報告に再び耳を傾ける。
それから各セクションの報告事項。大会本部テントに入ってた先輩が、そこで仕入れた他校の情報をいくつか報告。その中のひとつ、総北6番……鏑木一差が体調不良。それを聞いて、疲労の色すら見せずミーティングに参加していた真波がわずかに肩を震わせた。私は隣に座っていたからこそ、その動揺がはっきりと伝わった。ノールックで軽く背中を小突くと、詰めていた息を吐き出す気配。
「大丈夫」
「うん」
真波は静かに頷いたが、僅かに動揺が残っていた。ミーティング中じゃなければもっと、なにか言葉をかけたり話を聞いたりできるのに。それきり私たちはその後も続く報告に耳を傾ける。ミーティングはまだ途中だ。
総北もうちも、今年は1年生をひとりだけチームに入れている。去年は真波がそうで、一方総北は1年トリオだった。
きっと真波はよく知っているのだと思う。自分と走る5人が強くて頼もしくて、それで途方もなく遠くて、自分と隔絶している、その感覚を。
真波は、去年3年生だった先輩方から不思議チャンだの生意気ルーキーだの言われながらも可愛がられていた。それでいて「先輩たちと覚悟が違った」とその後悔を口にしたことがあった。それが、去年の秋。
だから真波も総北でひとりきりの1年生に何か思うところがあったのだろう。強くて頼もしい先輩達、全力でスプリントに挑んだあとの疲労、不安も体調不良もきっと言い出しづらかっただろうなというのは私でも想像できる。何やってんだよ、総北。鳴子章吉。お前がいながらこれかよ。
「そこ、ちゃんと聞いているのか」
「すみません」
そしてしっかり泉田さんに怒られた。前に立つ先輩方からは私たちの姿がよく見えたのだろう、黒田さんもこっちを睨む。選手とあろうものがミーティング中にふざけてる風に見えたのかも。真波は素直に謝って、座り直した。わかりやすく少し距離を空けて。真波が囁く。
「大丈夫だよ」
「うん」
大丈夫には何が含まれているのだろう。心配するな、悠人のことはオレらも気にしてるから、去年と同じ轍を踏まないから。
真波は2年生になったし、悠人は好調だ。疲労こそあれ、それは初日を走りきった全員に言えること。だから、大丈夫。私は気を取り直して戦況報告に再び耳を傾ける。
