青く光っている
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
弓射くんは今日もMTBでそこらじゅう走り回っていた。明日はシーズン7戦目、奥筑波山でレースがあって、私は行かないと宣言してあった。インターハイ観戦後、私は見事に熱を出して一昨日まで寝込んでいた。結局3日目も親に車を出してもらって見に行ったが、途中で発熱しゴールを見届けることなく帰宅した。生で見たレースの衝撃に体がついていかなかったに違いない。あるいは知恵熱。転生後の世界に適応しようとして発熱、転生あるあるだ。
私はいつものようにその辺に座って縦横無尽に走り回る弓射くんを眺めていたが、気迫の違いはすぐにわかった。明日がレースというだけでは無さそう、と思ったが、その理由の答え合わせはすぐにやってきた。弓射くんが休憩に戻ってきて、ボトルを呷る。そして。
「明日のさ、筑波山……やっぱり来ない?」
「……何時集合?」
「名前ちゃんの家に5時かな」
「5時か……」
「ちなみに、小野田くんも来るヨン」
ギクッ。ロードにハマった(ように見える)原因の人の名前に思わず肩が跳ねる。恐る恐る弓射くんを見上げて顔を伺う。相変わらずポーカーフェイスを崩さず、何を考えてるか読めない。笑い話で誤魔化せそうな雰囲気ではなさそう。なぜなら目が、勝負の目だから。サングラス越しに青い光がちらついている。
私の熱に浮かされた(比喩でなく熱が出ていた)インターハイの白熱見学土産話は全ッ然聞いてないみたいだったけど、あの日私が誰を見ていたのかはしっかりバレている。勘で当てたのか、弓射くんがその目でみて「こいつで間違いない」と思ったのか。
ああ、本当に始まっているんだ。弓射くんはもう、坂道くんの物語に出会っている。弓射くんが変わってしまった。はっきりわかる、弓射くんの琥珀色の目が、登って走る人間に対する羨望と歓喜に満ちている。私の知らないMTB編はとっくにはじまっている。心臓の鼓動が早い。
「な、なんで……」
「誘っといたから」
狼狽える私を見て、「名前ちゃんのそういうとこ、ホントおもしろいよね」と全然面白がってない顔で弓射くんは言った。だから、その目は怖いんだって。せめてサングラス越しでないと、こちらの心臓がもたない。弓射くんは満足そうに笑うとそのまま黙った。私は追求の手が緩まったことに安堵して、ため息をつく。
「……友達になったんだね」
「うん。やっぱり名前ちゃんも知ってたんだ」
「ウンまあそうデスネ……」
……やっぱりもう小野田坂道と……坂道くんと出会ってたのか。昨日千葉に行ったのはそういうこと?じゃあ今は本当に……私の知らないMTB編ってこと?インターハイが終わって案外すぐだった。心の準備はできていない。ああ、MTB編も読んでおけばよかった。2年目のインハイまで見届けたってことでやめちゃった自分の馬鹿。読んでおけば弓射くんが今後何するか分かったのに……準備しとけよバカヤロウ……!人生何があるかわからないんだから!今からできることはなるべく原作に関わりそうなレースを追うことくらい?それからSNSも……
「名前ちゃんは何してたの?」
「情報収集。ロードの方のインハイ出てた学校の過去レースとか調べてた。……ねえ、近場でロードの大会見に行くならどこがいいかな?やっぱり上工の出るレースとか?」
「……それより赤城じゃない。榛名は5月だし」
「そっか……ヒルクライムか。そうだね、さすが弓射くん」
「……やっぱり妬けるなあ」
「え?」
怖い。怖すぎる。まさかこの短時間で弓射くんからそんな言葉が繰り返し出てくるなんて。何が?今更だけどヤキモチの妬くであってる?溜めが長いのも怖い。
「な、なに?最近どうしたの」
「オレのレース、そんな自主的に見たことないじゃん」
ちょっと拗ねてる……!さっきまで怖かったのに、ちょっと小学生の頃の感じがして急にかわいい。親しみが持てる。出会ったばかりの頃、自分で MTBフィールド に連れてってくれたのに、弓射くんが走ってる間他の子と話してたら戻ってきて「何してるの」って不満気に言った、あの時と同じ顔してる。懐かしい。昔は小さくてニコニコしてて可愛かった。今はカッコ良すぎて威圧感すら感じる。男の子の成長って爆速で急激すぎる。
「……ニヤニヤしてる。何?」
「そ、そんなことないよ、誘ってもらえて嬉しいよ。私人誘うの苦手だし、自分で言い出すのもアレだし……」
「あれって?」
「厚かましいっていうか、なんか仲良しさんアピールみたいっていうか……弓射くんはすごいし、女の子にもモテるし……」
「へえ、名前ちゃん、そう思ってるんだ」
「エ!?」
急なテンションの降下に思わず顔を上げると弓射くんは「勝負の目」をしていた。まだ。身を屈めて顔が近づく。出会った時より広がった身長差を埋めるにはこうするしかない。 皇帝の狩りのための舞踊 ?あれは別物。自転車にも乗ってないのに、いったい何の獲物を狙うって言うんだ。
「本当に仲良しなんだから、そんなの……周りなんて、気にすることないヨン。それに、これからは今まで以上にオレを見ててもらわないと」
「怖いって……」
「あはは」
表情はいつものかっこいい笑顔だけど目は全然笑ってなかった。怖いよ!観客がたくさんのレース会場じゃなくて、いつものフィールド、しかも休憩中なのに、ガチガチに勝負の目をしている。弓射くん、一体何と戦っているつもりなんだ。私か?勝負以前に全然勝てる気がしないよ……
私はいつものようにその辺に座って縦横無尽に走り回る弓射くんを眺めていたが、気迫の違いはすぐにわかった。明日がレースというだけでは無さそう、と思ったが、その理由の答え合わせはすぐにやってきた。弓射くんが休憩に戻ってきて、ボトルを呷る。そして。
「明日のさ、筑波山……やっぱり来ない?」
「……何時集合?」
「名前ちゃんの家に5時かな」
「5時か……」
「ちなみに、小野田くんも来るヨン」
ギクッ。ロードにハマった(ように見える)原因の人の名前に思わず肩が跳ねる。恐る恐る弓射くんを見上げて顔を伺う。相変わらずポーカーフェイスを崩さず、何を考えてるか読めない。笑い話で誤魔化せそうな雰囲気ではなさそう。なぜなら目が、勝負の目だから。サングラス越しに青い光がちらついている。
私の熱に浮かされた(比喩でなく熱が出ていた)インターハイの白熱見学土産話は全ッ然聞いてないみたいだったけど、あの日私が誰を見ていたのかはしっかりバレている。勘で当てたのか、弓射くんがその目でみて「こいつで間違いない」と思ったのか。
ああ、本当に始まっているんだ。弓射くんはもう、坂道くんの物語に出会っている。弓射くんが変わってしまった。はっきりわかる、弓射くんの琥珀色の目が、登って走る人間に対する羨望と歓喜に満ちている。私の知らないMTB編はとっくにはじまっている。心臓の鼓動が早い。
「な、なんで……」
「誘っといたから」
狼狽える私を見て、「名前ちゃんのそういうとこ、ホントおもしろいよね」と全然面白がってない顔で弓射くんは言った。だから、その目は怖いんだって。せめてサングラス越しでないと、こちらの心臓がもたない。弓射くんは満足そうに笑うとそのまま黙った。私は追求の手が緩まったことに安堵して、ため息をつく。
「……友達になったんだね」
「うん。やっぱり名前ちゃんも知ってたんだ」
「ウンまあそうデスネ……」
……やっぱりもう小野田坂道と……坂道くんと出会ってたのか。昨日千葉に行ったのはそういうこと?じゃあ今は本当に……私の知らないMTB編ってこと?インターハイが終わって案外すぐだった。心の準備はできていない。ああ、MTB編も読んでおけばよかった。2年目のインハイまで見届けたってことでやめちゃった自分の馬鹿。読んでおけば弓射くんが今後何するか分かったのに……準備しとけよバカヤロウ……!人生何があるかわからないんだから!今からできることはなるべく原作に関わりそうなレースを追うことくらい?それからSNSも……
「名前ちゃんは何してたの?」
「情報収集。ロードの方のインハイ出てた学校の過去レースとか調べてた。……ねえ、近場でロードの大会見に行くならどこがいいかな?やっぱり上工の出るレースとか?」
「……それより赤城じゃない。榛名は5月だし」
「そっか……ヒルクライムか。そうだね、さすが弓射くん」
「……やっぱり妬けるなあ」
「え?」
怖い。怖すぎる。まさかこの短時間で弓射くんからそんな言葉が繰り返し出てくるなんて。何が?今更だけどヤキモチの妬くであってる?溜めが長いのも怖い。
「な、なに?最近どうしたの」
「オレのレース、そんな自主的に見たことないじゃん」
ちょっと拗ねてる……!さっきまで怖かったのに、ちょっと小学生の頃の感じがして急にかわいい。親しみが持てる。出会ったばかりの頃、自分で
「……ニヤニヤしてる。何?」
「そ、そんなことないよ、誘ってもらえて嬉しいよ。私人誘うの苦手だし、自分で言い出すのもアレだし……」
「あれって?」
「厚かましいっていうか、なんか仲良しさんアピールみたいっていうか……弓射くんはすごいし、女の子にもモテるし……」
「へえ、名前ちゃん、そう思ってるんだ」
「エ!?」
急なテンションの降下に思わず顔を上げると弓射くんは「勝負の目」をしていた。まだ。身を屈めて顔が近づく。出会った時より広がった身長差を埋めるにはこうするしかない。
「本当に仲良しなんだから、そんなの……周りなんて、気にすることないヨン。それに、これからは今まで以上にオレを見ててもらわないと」
「怖いって……」
「あはは」
表情はいつものかっこいい笑顔だけど目は全然笑ってなかった。怖いよ!観客がたくさんのレース会場じゃなくて、いつものフィールド、しかも休憩中なのに、ガチガチに勝負の目をしている。弓射くん、一体何と戦っているつもりなんだ。私か?勝負以前に全然勝てる気がしないよ……
