去る春、君の声だけが在る2
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表彰式を見たかったけど、相次ぐトラブルでそれはちょっと叶わなそうだった。
そもそも多分葦木場さんが表彰台の高いところに上がるの見たら泣くし、同期2人の表彰でも泣く自信があった。ただ仕事は山積みだし、初日から泣くわけにはいかないので、諦めるが吉だろう。やっと掴んだ葦木場さんの勝利。作戦はほとんど全て計画通りに完遂された。まず初日、ゼッケンオールコンプリート。
山岳ラインではあの後、やっぱり力尽きて落車しそうになった手嶋さんを小野田が助けた。あいつは山岳を狙わず救援目的だったのか水も持ってたので、内心ほっとした。それを見送り、それからチームの5人が問題なく通過するのを見届け、私は宿泊地へ向かうことにした。山岳ラインを通過していった我らがエースは余裕のある様子で、それだけで初日の結果を確信するには十分だった。
しかしいろは坂での自動車事故の影響は大きく、宿泊先に向かうバスも部活の車も全然来ないというのは想定外だった。道中に散った全部員がホテルに集合するにはかなりの時間がかかるだろう。
私は山岳ラインから取材車両に乗せてもらってなんとか中禅寺湖まで辿り着けそうだが、まさかの総北サポーターと同乗だった。しかも二対一。3人揃って後部座席に詰め込まれ、喧嘩するわけじゃないけど思わずガタイと人相を確認してしまう。……タイマンなら負けるわ。普通にチャリでも負ける。古賀さんは1年の時は千葉期待のホープだったと聞くし。
これで初日のゼッケン落としてたら私も平常心でいられなかっただろうけど、バシさんと真波が勝ってくれたので、ニコニコ笑顔で後部座席に乗り込んだ。
新聞社の人もライバル校同士の話を聞きたそうにしていて余計な緊張があったので、私と古賀さんに挟まれた杉元は緊張の面持ちだった。古賀さん、新聞社の人とか他校の私には笑顔だったけど部員に電話かける時はめちゃくちゃ怖かった。杉元は「ゴールまで行かなくて大丈夫?歩きで仲間と合流できそうかい?」と心配してくれてなかなかいいやつだった。あいつ多分お兄ちゃんだと思う。かわいい妹がいて、めちゃくちゃ甘やかしてそう。
報道車両で移動するその間にも、本部放送やチャットで、目を疑うような報告が次々入ってきていた。とりあえず黒田さんの手当てだけゴール前待機チームに頼む。最悪の事態を考えて、事前に黒田さんを担ぎ込む病院は調べてある。それも3日分だ。大会本部にも医師は待機しているが、今年インターハイでの完全勝利を掲げている黒田さんはどんな無茶でもやりかねないから。最悪の予想が当たってしまって、初日からコレだ。
今日の黒田さんは当然最良の走りで葦木場さんを送り出したが、自身はそのままハンドルを手放して盛大に落車、二度のコーナーでエグいコーナリングをキメたせいで、いつも以上に血まみれ。地面に転がって、ほぼ気絶状態で、随分長い間起き上がることができなかった。沿道で待機していた部員の声掛けにも反応は薄く、再び立ち上がった後もフラフラしていたらしい。
まだ初日だというのに!「自分が怪我しても傷だらけでも、なんとしてもエースをゴール前に最善のポジションで送り込む」というスピリットは完全に荒北さんの血を感じる。よくない影響だ。何度も言うが、まだ初日だ。
とにかく黒田さんの無事を確認したかったが、私はゴール地点には行けない。渋滞のせいであれこれ遅れが生じたせいで、宿泊先で予定していた諸々の手続きと連絡事項が間に合っていない。あーあ、バシさんの勝利演説見たかったな。ハンディカムで撮ってるはずだから、学年チャットで頼めば後で見せてもらえるだろうけど。ああいうのは生で見て現場で歓声をあげたいのに。多分歓声あげる前に泣くけど。
ゴールに向かう杉元達と別れ、途中で報道車を降りる。手を振って車を見送り、宿泊先に向かう。リッツカールトン、金谷ホテル……有名ホテルを横目に宿舎を目指す。
ゴール地点にいる部員達は表彰式が終わったらすぐ戻ってくるから、出来る限りの遅れは取り戻しておきたい。ちょっと走るか。
しばらく走ったところで、本部テント待機組から連絡チャットが入って足を止めた。総北の6番鏑木が体調不良、手嶋さんも限界寸前。バシさんと真波が削りまくったから、当然だ。手嶋さんはゴールに辿り着けるか心配なくらい、限界だったし。ふたりと競い合ったバシさんと真波も同じくらい消耗している筈だから、体調はよく見ておかないと。
紛うことなき初日完全勝利で今頃泉田さんは高笑いしてるだろうが、私は山岳ライン通過後の手嶋さんを見てるので少し微妙な気持ちだ。深呼吸のち肩を回して、気持ちを切り替える。少々暑いが風が吹くと涼しい、いい気候だった。行こう。私はカバンを背負い直して、宿までの道を再び走る。
そもそも多分葦木場さんが表彰台の高いところに上がるの見たら泣くし、同期2人の表彰でも泣く自信があった。ただ仕事は山積みだし、初日から泣くわけにはいかないので、諦めるが吉だろう。やっと掴んだ葦木場さんの勝利。作戦はほとんど全て計画通りに完遂された。まず初日、ゼッケンオールコンプリート。
山岳ラインではあの後、やっぱり力尽きて落車しそうになった手嶋さんを小野田が助けた。あいつは山岳を狙わず救援目的だったのか水も持ってたので、内心ほっとした。それを見送り、それからチームの5人が問題なく通過するのを見届け、私は宿泊地へ向かうことにした。山岳ラインを通過していった我らがエースは余裕のある様子で、それだけで初日の結果を確信するには十分だった。
しかしいろは坂での自動車事故の影響は大きく、宿泊先に向かうバスも部活の車も全然来ないというのは想定外だった。道中に散った全部員がホテルに集合するにはかなりの時間がかかるだろう。
私は山岳ラインから取材車両に乗せてもらってなんとか中禅寺湖まで辿り着けそうだが、まさかの総北サポーターと同乗だった。しかも二対一。3人揃って後部座席に詰め込まれ、喧嘩するわけじゃないけど思わずガタイと人相を確認してしまう。……タイマンなら負けるわ。普通にチャリでも負ける。古賀さんは1年の時は千葉期待のホープだったと聞くし。
これで初日のゼッケン落としてたら私も平常心でいられなかっただろうけど、バシさんと真波が勝ってくれたので、ニコニコ笑顔で後部座席に乗り込んだ。
新聞社の人もライバル校同士の話を聞きたそうにしていて余計な緊張があったので、私と古賀さんに挟まれた杉元は緊張の面持ちだった。古賀さん、新聞社の人とか他校の私には笑顔だったけど部員に電話かける時はめちゃくちゃ怖かった。杉元は「ゴールまで行かなくて大丈夫?歩きで仲間と合流できそうかい?」と心配してくれてなかなかいいやつだった。あいつ多分お兄ちゃんだと思う。かわいい妹がいて、めちゃくちゃ甘やかしてそう。
報道車両で移動するその間にも、本部放送やチャットで、目を疑うような報告が次々入ってきていた。とりあえず黒田さんの手当てだけゴール前待機チームに頼む。最悪の事態を考えて、事前に黒田さんを担ぎ込む病院は調べてある。それも3日分だ。大会本部にも医師は待機しているが、今年インターハイでの完全勝利を掲げている黒田さんはどんな無茶でもやりかねないから。最悪の予想が当たってしまって、初日からコレだ。
今日の黒田さんは当然最良の走りで葦木場さんを送り出したが、自身はそのままハンドルを手放して盛大に落車、二度のコーナーでエグいコーナリングをキメたせいで、いつも以上に血まみれ。地面に転がって、ほぼ気絶状態で、随分長い間起き上がることができなかった。沿道で待機していた部員の声掛けにも反応は薄く、再び立ち上がった後もフラフラしていたらしい。
まだ初日だというのに!「自分が怪我しても傷だらけでも、なんとしてもエースをゴール前に最善のポジションで送り込む」というスピリットは完全に荒北さんの血を感じる。よくない影響だ。何度も言うが、まだ初日だ。
とにかく黒田さんの無事を確認したかったが、私はゴール地点には行けない。渋滞のせいであれこれ遅れが生じたせいで、宿泊先で予定していた諸々の手続きと連絡事項が間に合っていない。あーあ、バシさんの勝利演説見たかったな。ハンディカムで撮ってるはずだから、学年チャットで頼めば後で見せてもらえるだろうけど。ああいうのは生で見て現場で歓声をあげたいのに。多分歓声あげる前に泣くけど。
ゴールに向かう杉元達と別れ、途中で報道車を降りる。手を振って車を見送り、宿泊先に向かう。リッツカールトン、金谷ホテル……有名ホテルを横目に宿舎を目指す。
ゴール地点にいる部員達は表彰式が終わったらすぐ戻ってくるから、出来る限りの遅れは取り戻しておきたい。ちょっと走るか。
しばらく走ったところで、本部テント待機組から連絡チャットが入って足を止めた。総北の6番鏑木が体調不良、手嶋さんも限界寸前。バシさんと真波が削りまくったから、当然だ。手嶋さんはゴールに辿り着けるか心配なくらい、限界だったし。ふたりと競い合ったバシさんと真波も同じくらい消耗している筈だから、体調はよく見ておかないと。
紛うことなき初日完全勝利で今頃泉田さんは高笑いしてるだろうが、私は山岳ライン通過後の手嶋さんを見てるので少し微妙な気持ちだ。深呼吸のち肩を回して、気持ちを切り替える。少々暑いが風が吹くと涼しい、いい気候だった。行こう。私はカバンを背負い直して、宿までの道を再び走る。
