去る春、君の声だけが在る2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
トラブルがありつつも無事神奈川代表テントに辿り着いた。レイさんとエントリー関係の最終確認をしていたら、バシさんがフラッと帰ってきた。……機嫌が悪そう。なるべく能天気そうな声で尋ねる。
「バシさんどこ行ってたの?全然帰ってこないんだもん」
「……人が多いんだよ」
「それは……まあ。そうね、少なく見積もって300人くらいは準備中かもね」
「いい場所は見つからなかったか?」
「もうテントの裏とか使えば?荷物積んであるから視界は遮られると思うけど」
レース前に精神統一したいのはいつものことだけど、さすがにインハイともなればスタート地点は混み合っている。私とレイさんがあれこれ言うのにも嫌そうな顔。
「おやつはクーラーボックス入ってるからね」
私の今日の待機位置が山の上なので、クーラーボックスに飲み物と食べ物を入れてきた。出かけに出走前にバシさんが食べるおやつ……かたまりのハムも一緒に入れてって言われたので突っ込んできた。他の部員がうっかり持って行かないようにとクーラーボックスに「銅橋」とデカデカ書いておいたせいで部員は誰も近寄らない。それにしたって、ハム食って走るやつ他にいないよ。その時点でもう誰にも負けてないよ。
バシさんは諦めたのかローラー台をセットし始めた。遠巻きに見ていたメカニックの先輩方が慌てて駆け寄ってくる。
「待て待て待て!」
「ここはオレらに任せとけって」
…既にあっちこっちやらかしてるので、先輩方はまるで気性の荒い猛獣の飼育員さんの如き慌てっぷりである。バシさんは不満そうに離れたが、これに関しては擁護のしようがない。だって、散々『曲げ』まくったし。泉田さんは全然困ってない風だったので「わあ〜!気合い入ってるっすね〜予備増やします〜」ってヘラヘラしといたけど、普通に怖すぎて泣けた。握力いくつになるとアレが曲げられるようになるの?圧倒的パワータイプのバシさんが「永久退部目前」を回避して以来、メカニックの先輩方は悪夢にうなされる日々を過ごしている。
レイさんと名簿の1番下、16番の悠人まで確認を終えて安堵のため息。不備はなさそう。万が一にもミスは許されない。真波は自分で手続きさせたらエントリーミスったことあるし。2年生にもなってエントリー失敗することある?
レイさんはそのまま情報収集のため他校のエントリー状況を確認に移る。私のここでの仕事は全て終わり。
「じゃ、私先出るからね。バシさん、頑張ってね」
「ああ」
「緊張してるな?」
「そりゃするだろ」
「まあ程々にね。楽しんで」
どうせ走り出したらそれどころじゃないでしょう。いつものことだ。クーラーボックスを開けてハムだけ取り出す。それを背中のポッケに突っ込んでから軽く肩を叩く。なるべく気安く、運動部ぽく。
「じゃあ気をつけて行ってらっしゃい」
「おう」
もっと言いたいことはあったはずだけど、私はそれだけにとどめた。何を言ってもフラグになるような気がしたので。ファースト取ってよ、ってわざわざ直前にプレッシャーかけるようなことでもないと思って。
「悠人は?いいのか」
「いい、どうせ何言っても聞かないし」
何も知らない一年目がいちばん自由に走れる。私は軽く手を振って神奈川代表テントを出た。もちろんハムの分だけ軽くなったクーラーボックスを忘れずに持って。
「バシさんどこ行ってたの?全然帰ってこないんだもん」
「……人が多いんだよ」
「それは……まあ。そうね、少なく見積もって300人くらいは準備中かもね」
「いい場所は見つからなかったか?」
「もうテントの裏とか使えば?荷物積んであるから視界は遮られると思うけど」
レース前に精神統一したいのはいつものことだけど、さすがにインハイともなればスタート地点は混み合っている。私とレイさんがあれこれ言うのにも嫌そうな顔。
「おやつはクーラーボックス入ってるからね」
私の今日の待機位置が山の上なので、クーラーボックスに飲み物と食べ物を入れてきた。出かけに出走前にバシさんが食べるおやつ……かたまりのハムも一緒に入れてって言われたので突っ込んできた。他の部員がうっかり持って行かないようにとクーラーボックスに「銅橋」とデカデカ書いておいたせいで部員は誰も近寄らない。それにしたって、ハム食って走るやつ他にいないよ。その時点でもう誰にも負けてないよ。
バシさんは諦めたのかローラー台をセットし始めた。遠巻きに見ていたメカニックの先輩方が慌てて駆け寄ってくる。
「待て待て待て!」
「ここはオレらに任せとけって」
…既にあっちこっちやらかしてるので、先輩方はまるで気性の荒い猛獣の飼育員さんの如き慌てっぷりである。バシさんは不満そうに離れたが、これに関しては擁護のしようがない。だって、散々『曲げ』まくったし。泉田さんは全然困ってない風だったので「わあ〜!気合い入ってるっすね〜予備増やします〜」ってヘラヘラしといたけど、普通に怖すぎて泣けた。握力いくつになるとアレが曲げられるようになるの?圧倒的パワータイプのバシさんが「永久退部目前」を回避して以来、メカニックの先輩方は悪夢にうなされる日々を過ごしている。
レイさんと名簿の1番下、16番の悠人まで確認を終えて安堵のため息。不備はなさそう。万が一にもミスは許されない。真波は自分で手続きさせたらエントリーミスったことあるし。2年生にもなってエントリー失敗することある?
レイさんはそのまま情報収集のため他校のエントリー状況を確認に移る。私のここでの仕事は全て終わり。
「じゃ、私先出るからね。バシさん、頑張ってね」
「ああ」
「緊張してるな?」
「そりゃするだろ」
「まあ程々にね。楽しんで」
どうせ走り出したらそれどころじゃないでしょう。いつものことだ。クーラーボックスを開けてハムだけ取り出す。それを背中のポッケに突っ込んでから軽く肩を叩く。なるべく気安く、運動部ぽく。
「じゃあ気をつけて行ってらっしゃい」
「おう」
もっと言いたいことはあったはずだけど、私はそれだけにとどめた。何を言ってもフラグになるような気がしたので。ファースト取ってよ、ってわざわざ直前にプレッシャーかけるようなことでもないと思って。
「悠人は?いいのか」
「いい、どうせ何言っても聞かないし」
何も知らない一年目がいちばん自由に走れる。私は軽く手を振って神奈川代表テントを出た。もちろんハムの分だけ軽くなったクーラーボックスを忘れずに持って。
